melancholy short

□白昼夢とサイレン
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何度も振り返った。
終わりを迎えた朝、あの窓の向こうに愛しい影を探す。
見えないかな、見えないかな。

真っ青な恋だって分かってる。分かってるけど 思わずにはいられないから、恋なんだ。

貴方は全部知っていた。私が貴方に惹かれている事も、実らない結末も、この恋の色も。だから離れていったんでしょ。
それはきっと、貴方の優しさ。なんて、甘い。なんて、残酷。

でも私はそんな優しさを裏切ってでも、貴方に会いたかった。たとえ、それが自分を苦しめる事になろうとも。



重い足どり。離せない瞳。
やっぱり貴方は見えない。きっとこれから先、ずっと貴方は見えない。もう二度と、会わない。
いつか、この恋心を忘れる日が来るとしても 優しい貴方の笑顔だけがきっと何時までも消えない。

叶わないと知っていたなら、どうしてあんな笑顔を私に向けたの。どうして私を もっと強く突き放してくれなかったの。どうして。


去る事しか出来ない私の足は、私の帰るべき場所へと向かう。

貴方と会わなければ、こんな悲しい想いはしない筈。こんな苦しい想いはしない筈。泣いたりなんかしない筈。
でも、貴方と会わなければ、嬉しい事なんか一つもない。笑顔なんかになれない。ちっとも楽しくない。


気づいたらUターン。
暗くなりかけた空を重たい雲が覆い尽くしていた。

私につられて泣き出した空の中、また私は立っていて 一つの約束もない貴方を待つ。


奪われていく体温に震えていた時、突如 視界をよぎった三つ編み。

「アンタ、馬鹿なんじゃないの」


呆れた声で、雨が止む。


「どうして?」

「それはコッチの台詞だヨ」


傾けられた傘。濡れる貴方の左肩。

少しだけ微笑んだ貴方が見え、私の頬に温かい雨粒が落ちた。


浮遊感を感じた。
抱き上げられたかな、なんて幻想が浮かぶ。
でも何時の間にか視界から貴方は消えていて、代わりに鉛色の空が映っていた。



瞬きをした。その瞬間、冷たい雨に叩かれた。何かと思えばだるい体。
硬いアスファルトに横たわっている自分と、ソレを囲う群衆。
こんな状況の中でも、群衆の中に貴方を探した。さっきまで、そばに居た貴方を。


だんだん近づいてくる救急車のサイレン。やっとその意味に気づいた時、暗く沈んでいく視界に耐えきれなくなって ゆっくり瞼を下ろした。

最後まで貴方は残酷。全部夢だったなんて、ね。






fine.



***
いや意味わかんねーよコレどうしよう。卒業式のノリで書いたらこうなっちゃいました。ハンセーします。

illusion:幻影

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