melancholy short
□終点で見たものは
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咳き込んだ。
口元を抑えたけれど、顎を伝って胸元に落ちた雫は、真っ赤。
鮮血だ。
これが団長に知れたら、色々とマズイ。
無理を言って入団した身の私には、立場がなかった
。
その上に、不治の病を患いましただなんて話にならないから。
こっそり手に入れた薬を戸棚の奥から取り出し、水で一気に流し込む。
病気の進行を遅らせ、一時的に症状を和らげる特効薬だ。
おかげで口内で粘つく鉄の味も一緒に和らいで、喉を伝っていった。
これでしばらくは、大丈夫。
ふう、と息を吐いて、洗面台の横にへなへなと座り込んだ。
口の周りのこびり付いた血を拭う。
症状はどんどん悪くなってる。
自覚は勿論ある。
休養が第一だって分かってるけど、休んでなんかいられるわけがない。
だって、そんなことしてたら団長に捨てられちゃう。
ただでさえ、ギリギリで入団した私。
少しでも認めてもらえるように、頑張らなきゃいけない。
だから、不治の病だろうが何だろうが、そんなものに構っちゃいられないの。
いつも苦しい時は、そうやって自分に言い聞かせてた。
病気に負けないように、自分を奮い立たせてた。
でも、最近は吐血する回数も増えて、薬を飲んでも息苦しさが消えなくなってきて。
今まではなかった手足の痺れで、任務中に何度も危ない状況になった。
そんな本調子じゃない私を怪しがった阿伏兎さんは、私の体調に気づいてるみたいだった。
一昨日の任務中では団長に聞こえないように、私に休養を進めてきた。
平気、の一点張りで何とか阿伏兎さんを追い返したけど、本当は感謝してる。
あとどのくらい、団長といれるだろうか。
いつからか、私の指折り数える日が始まった。
でもそれは、何日もしないうちに終わりを迎えることになりそう。
きっかけは、ついさっき。
任務から帰還した後の会議中。