icebound shangrila

□04
1ページ/4ページ

暫くすると、アブトさんが帰ってきた。



「雑用係として雇ったことになってるからお前。……それより本当の雑用係はどこ行った?」



「さっきコイツがドアごと蹴り飛ばしてた「いいえ!喝を入れたんですよアレは!雑用如きがきらびやかな格好をするもんじゃありませぇん!って」


「全身ジャージのお前が言うなよ」


仕方ないじゃんコレしかないもの!

でも雑用こなすなら、全身ジャージの方がやりやすくない?コレよくね?




あ、ちょっと待てよ。全身ジャージしか服のバリエーションないなら、え じゃぁここにいる間 私ってずっと全身ジャージなの?
下着もそのまんま?


ヤバくねオイ。不清潔じゃんよ。
雑用係になる前に、雑菌娘になっちゃうじゃん。
同じ"雑"が付くとはいえ、ねぇ?目指してるとこが違うじゃない。
じゃぁ、どうすればいいの。宇宙空間に服屋なんてないだろ流石に。




私が頭を抱えて唸っていると、アブトさんは ふと思い出したかのように言った。



「あ、そういえば空き部屋あったよな?」



「あぁ、前の雑用が使ってた部屋ネ」



「確か服とか家具とかそのままだった気がするから、それ使ってろよ。お前…えーっと名前は?」



「小夜です!」



「あー、小夜ね。俺は阿伏兎だ。アブトじゃないから阿伏兎だから」



なんか、雑菌娘にはならなくて済みそうだ。
よかったホント。





「そういえば、チャイナ服着てますよね。ってことは、中国人ですか?」



「何だソレ。俺も団長も夜兎だっての」


また出た"夜兎"。
コッチが聞きたいよなんなんだソレ。



「夜兎って、どんなものなんですか?」


「最強の傭兵部族だヨ」


突然団長さんが割り込んできた。



「は?」


「闘うの大好きだし、血を見るとウズウズしちゃうし」




まるで映画にでも出てきそうなセリフを淡々と吐く団長さんに 唖然としていると、それに気付いたのか団長さんは目を開けてこちらを見た。



「アンタ、本当に物分かりが悪いネ。つまり夜兎の力っていうのは、」




団長さんはそう言った瞬間、視界から消えた。


そして、何が起こったのか分からないでいる私の目の前に団長さんが現れた。




楽しそうな蒼い目と 硬く握り締められた拳が一瞬だけ見えた。


その拳が私に向かって構えられているのに気がついた時には、風を切る音と共に 凄まじい破壊音。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ