icebound shangrila

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「だれかー!たーすーけーてー!!」





あらん限りの声で叫び、鉄製の扉を拳で何回も叩いた。



でも扉の向こうに人の気配は無い。




ヤバイよどうしよう、これじゃ家に帰るどころじゃないよ。

あああ、なんで私ばっかりこんな目に…



いやいや、今は弱気になってる場合じゃない。




大きく息を吸って、思いっきり扉に体当たりをしてみた。

が、やっぱり開くわけがない。





「ったーい!」



ぶつけた右肩がじんじんする。
と、そのとき。




「無駄だよ、そんなことしても」



突然暗闇の中で女の子の声が響き渡った。





な、私以外に誰かいる!?
まさか…



「きぃああああああ!オバケオバケオバケェエ!!」



「何でそうなるのよ!ったく、好い加減に静かにしたらどうなの!?」



「…ん?」




次第に暗闇に目が慣れてきた。

奥の方に、沢山の人影が見える。
こんなに沢山の人が居たなんて。




「え、あの!あなた達もこの倉庫に閉じ込めらちゃったの!?」



私が問いかければ、さっき私に話しかけてきたと見られる子がこちらを向く。




「違うわよ、拉致られて売られてここに来たのよ」






……え?




「ゆ、ゆゆゆ誘拐じゃないスかそれっ!」




小夜ちゃんの足が生まれたての子鹿みたいにぶるっぶるだよもォ常にフェイントかましてるみたいになってんだけどもォ!




は、誘拐?売られた?

だだだだだだれに!?






もしかして、春雨?







「い、意味わかんないんだけどっ」



「そのうちすぐわかるわ」




よく見れば、私といくらも変わらない年の女の子だ。

なんか、みんな着物きてる。




「明日には、もう吉原行きよ。こうやって呑気に話していられんのも今日でオシマイ」





今日でオシマイ?
は?

吉原?吉原て何?




「あ、あの、つかぬことをお伺いしますが…吉原って何?」



「そんなことも知らないの?」





なんだよもぉ大げさにため息なんかつきやがって。
阿伏兎2号ってあだ名付けんぞコノヤロー。




「遊郭よ遊郭。男の天国、女の地獄って言うでしょ?あたし等は遊女にされんのよ」



「あ、そうなんだ。ユウジョかぁユウジョ」





ユウジョ?






「えええええ!遊女ォオオ!?」



「いちいちうるっさいわァ!早く事の重大さに気づけェ!」




ちょっと待ってちょっと待って、遊女ってお前、○○○して○○○する職業でしょ?
だから毎日○○で○○○な○○をして○○○が「お前の発言分かりづらいわァアア!殆ど○○○ばっかじゃねぇか!」




冗談じゃない。
自分の世界に帰れないまま、こんなとこで売春なんかしてたまるか。




「嫌だよっ私、遊女なんかになりたくない!家に帰るんだから!」



「だから無駄だって言ってんでしょ。春雨に捕まってる以上、逃げ場なんか無いのよ」






諦めるように目を閉じた彼女は、そのまま膝を抱えてうずくまった。





何もかも、信じたくなかった。

全部、夢だったらいいのに。

春雨も雑用係もこの世界自体も、そして団長も夢だったらいいのに。



ほっぺたをつねってみた。


痛い。






私は現実を認め、少し離れたとこにうずくまる。




やっぱ、団長たちは悪いことしてるのか。


なんか、なんとなく分かってたけど認めたくなかったんだよねー。





俯いたら、膝に涙がぽたぽたと落ちた。
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