icebound shangrila
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「あー、暑いっ」
こんなん何枚も重ね着なんてしてられないっての。
遊女って凄いわー。
1、2枚くらい脱ごうと帯に手をかける。するとそれを見た団長がすかさず言う。
「もったいない、せっかく着てるのに脱いじゃうの?似合ってるヨそれ」
「さっき似合ってないって言ってたじゃないですかー」
ムスッとした表情を向けると、へらへらした笑顔でそれに応える団長。
「今晩は、この救世主様にご奉仕してくれるんじゃないの?」
何を言い出したかと思えば、この変態。
すくっと立ち上がり、私を壁に追い詰めるようにして迫って来る。
なんか、あの時みたいだ。
「ちょ、そうやってにじり寄ってくるのやめてもらえます?あの時メチャクチャ怖かったんですから」
「怖がる顔が見たくてネ。普段はあんな怯えきった顔なかなか見れないだろ?」
鬼畜だよコイツまじで鬼畜だわ鬼畜王子だわー。
あの状況でそんなこと考えてたのかよ。
「でもまさか、俺に助けを求めるとは思ってなかったなー」
「そ、それはっ」
そう言われた瞬間、顔が一気に熱くなって身体がカチコチに緊張する。
やだ、何コレ。
だって、あの時はその、なんていうか誰でもいいからすがりたい気分だっただけで、そしたらたまたま団長が頭に浮かんだ、みたいな…
一人でもんもんと言い訳を考えていると、何時の間にか団長が目の前に居た。
「何、黙っちゃって。かーわいー」
その言葉に、また1℃体温が上がる。
「う、うるさーい!」
私は渾身の力を振り絞って団長の胸板を押し返し、風呂場に直行した。
脱衣所の扉を閉めてからも、しばらくは着物を脱がずに扉の前で構えていたが、団長が入ってこようとする気配はない。
少しビックリしながらも、扉を細く開けて部屋を見てみると、ベッドに腰掛けて番傘を拭いている団長の背中が見えた。
もう覗き魔はやめたのか、と思うとホッとした半分、突然どうしたんだこの人、という疑問が浮かぶ。
風邪でもひいたんかな?具合でも悪いんかな?脳みそぶっ壊れたんかな?
あ、もともとか。
「なーに覗いてんの?とっとと風呂入りなヨ」
「!?、は、はいっ」
なんか覗いてたの気付かれてたし!アイツ後頭部に目玉でもついてんのか!
それに、なんか今の会話じゃ私が覗き魔みたいじゃん立場逆転してるみたいじゃん!
わ、私の顔アツっ!
熱あるでしょ絶対コレ!
風邪ひいてんのは私の方じゃん。
真っ赤な顔のままいそいそと着物を脱ぐ。
そのまま風呂に入り、念入りに化粧を落として湯船につかった。
ぼんやり今までの出来事を思い返していたら、ふと団長と喧嘩していたことを思い出した。
あれ、何で喧嘩してたんだっけ。
たしか…団長の変態横暴っぷりにいい加減キレた私がシカトしまくって、っていうのが始まりだったかな。
あ、もしかしてその時私が怒ったのが効いて変態行為に歯止めがかかったのかな。
なーんてね、まさかあのバカ団長に反省の念があるわけないか。
単なる気まぐれだよねー。
その後、用心しながら脱衣所に上がったが団長の姿はやっぱりなかった。