icebound shangrila
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「パンプキンプリンとカブト虫ゼリー入れ替えてきてやる!フハハ残念だったな!お前にはもう二度とワクワクドキドキのハロウィンは訪れないぞ!」
この日のために、こちらも買い込んでいた(阿伏兎さんの金で)カブト虫ゼリーを3袋、枕元の棚から取り出す。
「なんでそんなにカブト虫ゼリー持ってんだよ!お前気持ち悪いわ!」
布団を跳ね除けてベッドから飛び降りようとしたが、あれ。身体が動かない。
「「え、」」
阿伏兎さんと私の声が重なる。
下をみれば、私の腹にこれでもかっていうくらいに食い込んでいる腕。
そして、見慣れたアンテナがぴこぴことのぞく。
「あ、団長そこにいたんだー。じゃ、お取り込み中失礼しました」
「え?…えええ!ちょ、ちょっと待って!誤解だから!お取り込み中て何だよ!こんなん一方的だから!私の同意ないから!ああああ逃げるなって!」
阿伏兎さんは私の話を聞かずに、ピューっと逃げて部屋からいなくなってしまった。
ていうか、
「何してんですか団長!ここ私のベッドですよ!ちょ、暑苦しいっ、くっつかないで!吐く!吐くからそんな強い力で締められたら!さっきから胃もたれヤベーとか思ってたけど、やっぱり団長の仕業だし!それに、団長が布団の中に入ってたから私が太ったって勘違いされちゃったじゃないですか!」
一気にまくしたてたから呼吸困難だよゼハー!
おい、肺に酸素足りないんだけど!絞めないでお願い絞めないでわたしの気道!
「朝からうるさいヨ雑用。そう、そうやって黙ってバタバタしてなヨ」
鬼畜ゥウウ!
喉絞まってんだよ息できてないんだよ!
必死になって、団長の腕をバシバシ叩くと、スルリと団長の力が抜けた。
「ぶはっ!苦しかった!…って、もう寝てるし」
再び私の腹に腕を食い込ませ、スヤスヤ眠る団長。
なにこの安らかな寝顔。
あーもう寝覚め悪すぎだよ安らかに二度寝する気分じゃないよ。
…なんか喉乾いたしお茶でも飲もう。
私は締め付けられた体をギギギ、とか音がしそうなくらい無理やり動かした。
やべぇよ、ぜったい内臓グチャグチャになるよ。あ、今絶対、肝臓の位置ずれたって。
そんなグロテスクなことを考えながら、ベッドから降りるとそれに団長もついて降りてきた。
「え、どんだけ?」
こいつ寝てるくせになんで私から離れないの。苦しいんだけど重いんだけど。
仕方なく、団長をズルズル引きずりながらキッチンに向かう。
「あれ、お茶が切れてる」
あああもう、給湯室まで取りにいかなきゃいけないとか面倒くさいんだけど。
仕方なく、私は団長を引きずったまま部屋の外に出た。