icebound shangrila
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「団長ー、ご飯できましたよ!」
「んー、今日は何?スパゲッティ?」
「ざんねーん、ミネストローネでしたー!」
やっと戻ってきた日常。
仲直りしてからは、ドキドキしながらもなんとか過ごしている。
今日は午前中に任務を済ましたらしく、少し疲れている様子。
団長、忙しいんだなぁ。
「おかわり沢山ありますからねー」
「うん」
あ、もうおかわりしてましたか。それはそれは。
「あ、そうだ」
突然団長がスプーンを置いて席を立った。
なんだろ。何が起こるんだろ。
私もスプーンを止めて、団長の方を見る。何やらハンガーに掛かったマントをゴソゴソと探り、小さな包みを取り出した。
「あった、あった」
すると、私目掛けていきなり小包みを投げてきた。
必死に受け取ると、何だか硬い感触。何だろコレ。
「お土産だよ、なんか特産品らしい」
「わ、私に買ってきてくれたんですか!?」
ウルウル目で振り返れば、ふいっとそっぽを向かれてしまう。
「お前のために買うわけないだろ、落ちてただけだよ」
こんな可愛い包装紙にくるまって?
下手くそな嘘だと分かって、胸の奥が温まる。笑いを堪えて団長を見た。
「ありがとうございます、開けてみてもいいですか?」
「好きにすれば」
「はーい!」
破れないように包装紙を開け、中の物を取り出した。
「これって、…」
ガラスの中に、薄いピンクの砂。木の枠で守られるようにして組み込まれたソレは、砂時計。
「…気に入らない?」
「えっ?あ、いえ!綺麗で見惚れてました!ありがとうございます、こんなに可愛い砂時計」
「…そう」
「大事に飾っときます!どこがいいかな、あそこがいいかな」
嫌なこと、思い出しちゃった。
でも、本当は団長に言わなきゃいけないこと。
コトリ、と砂時計を窓辺に置いた。
「そんなとこに置いて、落とさない?」
「大丈夫です!何が何でも私が砂時計守りますから!」
だって、団長がくれたんだもん。
夢に出てくる砂時計と、団長がくれた砂時計が似てるのはただの偶然。
変なことは考えないようにしよう。
「えへへ、綺麗ですねー!」
私がテーブルに戻ると、団長はスプーンをまた手に取り食べ始めた。
こういう感じの話だと相変わらず無愛想な感じだけど、それもまた可愛いと思ってしまう私は重症なんだろう。
「何ニヤニヤしてんの?気持ち悪いよ」
「嬉しくて!」
「…あっそ」
願くば、こんな毎日がこれからも続いてくれたら。