icebound shangrila

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扉を開ける大きな音で目が覚めた。
時刻は2時半。こんな時間に一体何事だろう。




「オイ、しっかりしろ!」



暗くてよく見えないけれど、人影が二つ。そのうちの一人はもう一人に支えられるようにして立っている。

怪我人だろうか。なら場所を間違えてる。ここ医務室じゃないし。



「団長!」





呼ばれてますよ団長ー。
あれ、この声は阿伏兎さんだ。医務室に運ぶの手伝ってくれ的なアレじゃね。



寝ぼけた頭でそんな事を考えながら布団を肩まで掛け直した。




「オイ団長!」




安眠妨害だ。眠たいのは分かるけど、早く手伝ってあげなよ団長。流石にこんな騒音の中じゃ起きるでしょ。


なかなか起きない団長の方をチラリ、と見た。






居ない。
ベッドがもぬけの殻だ。




おかしい。
だって夜にはオヤスミっていってベッドに入ってたもん。




「団長、しっかりしろって!」





もう一度人影を見て、ハッとした。


私、バカだ。
やっと状況が飲み込めた。



眠気が吹っ飛んだ頭が命令を下すまでもなく、体が勝手に飛び起きて明かりをつけに走る。



パチ、という音で一瞬目が眩むような明るさが室内を照らした。


明るさに慣れてきた目に映ったのは、阿伏兎さんに支えられてぐったりとしている団長。




「どうしたんですか!何が、何があったんですっ、」



「落ち着け小夜、コイツちょっと酔っ払ってるだけだ」



「え!団長が酔っ払ったんですか?」



「あぁ、珍しいがな。相当飲んだみたいだ。下の階で飲み潰れてんの見つけて驚いたぜ」




いつだかのダブツさんの件では、まったく酔いが回らないようでお酒に強い人だなぁ、とか思ってたのに。


なんでこんなになるまで飲んじゃったんだろ、団長。
何かあったのかな。



「団長、大丈夫ですか?」



「呼びかけても駄目だ、コイツ意識なくなってるみたいだから」



阿伏兎さんが力任せに団長をソファの方へ引きずっていこうとしたその時、ピクリと団長の腕が動いた。


意識が戻ったのかと、また声をかけようと口を開きかけたけれど、すぐに口を閉じた。

なんと、物凄い速さで団長の手が阿伏兎さんを吹っ飛ばしていったのだ。


あまりに一瞬のことで、頭がついていけない。
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