Chocolat

□Chocolat -X'mas
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毎年この季節になると、街全体が赤と白と緑で染められる。
ツリーを飾ろうとか、サンタクロースが来るとか、毎年飽きもせずワンパターンな事で盛り上がれるのだから平和なものだ。





「サンタさん、イイ女を下さい。サンタさん、俺にイイ女を下さい」
新品の大きな靴下を握り締めながら、隣でジェネラルが念じているのを、ブラスターが白い目で見る。
「なんで靴下?」
「お前知らねーのかよ、靴下を用意しておけば、サンタさんは靴下ん中にプレゼント入れてくれんだぜ!」
「あ、そう」
将軍様が真顔で何言ってるんだか。
「お前どーせこの後、例のオンナと会うんだろ」
適当に返せば、靴下を放ったジェネラルが恨めしいと言わんばかりに睨んでくる。
「会わないよ、付き合ってるわけでもないし」
「付き合ってなくても、クリスマスなんだからセックスすりゃいーだろ」
「いや、別にクリスマスとか関係ないし」
セフレである彼女とは本当に身体だけの関係だ、そんなロマンチックな仲じゃない。
「そろそろ行くよ、クエストの件はよろしくな」
「はいはいーっと」
クエストを合同で行う相談のためにジェネラルの部屋に来たのだが、これ以上長居したら何を言われるか分かったものじゃない。
ブラスターは足早にジェネラルの部屋を後にし、街に出た。


クリスマスという事で、いつもより賑やかな街を歩きながら、白い息を吐く。
今年は随分と冷え込むから、もしかしたら夜には雪が降ってホワイトクリスマスになるかも知れない。
「……」
ふと前方の酒場を見れば、ウェポンマスターとバーサーカーがジョッキ片手に騒いでいた。
クリスマスに、昼間から男2人でビールとは悲しい。
向かいのカフェでは、マイスターと大暗黒天が何やら話し込んでいるのが見えた。どんな組み合わせだ。

「エレちゃん早いよ、待ってよ」
「もう、サモちゃんが遅いんだって!」
しばらく街を歩けば、前方で早足で歩くエレメンタルマスターと、それを小走りで追い掛けるサモナーの姿が見えた。
何気なく見れば、2人とも両手いっぱいに荷物を抱えている。
綺麗にラッピングされたプレゼントらしき物や、ケーキの箱も見えたので、クリスマスパーティーでもするのだろうか。
可愛らしいな、なんて少し思う。
「わっ!」
「あーっ!サモちゃん何してるの!ちょっと大丈夫!?」
それにしても寒い、とブラスターがジャケットのポケットに手を突っ込んだところで、小走りだったサモナーが何かに躓いたのか派手に転倒した。驚いたエレメンタルマスターが、慌てて駆け寄る。
同時に、サモナーの持っていた荷物が散乱し、そのうちの1つの紙袋の中身が道に転がった。
金色の星やステッキやリース等、たくさんのクリスマスツリーの飾りだった。
「サモちゃんほんとドジなんだから!ほら、怪我してない?」
「大丈夫…、エレちゃんごめんね…」
「あーもうっ!そんな泣きそうな顔しないの!」
サモナーを慰めながら、エレメンタルマスターも散らばったツリーの飾りを集める。
ふと見れば、大きめの林檎の飾りがブラスターの足元までコロコロと転がってきていた。
「………」
赤色に光るそれを片手で拾い、ブラスターはサモナーとエレメンタルマスターに近付いた。
そのまま、手前にいたエレメンタルマスターに飾りを差し出す。
「あっ、ブラスターさん、ありがとう!」
「クリスマス当日に飾り付け?」
「もう飾り付けはしたけど、パーティーするから派手にしたくて!ほらサモちゃん行くよ!」
やはりクリスマスパーティーをするらしい。
急ぎ足で街を駆けていく2人の後ろ姿を一度だけ振り返ったブラスターは、再びジャケットのポケットに手を突っ込み、歩き出した。
「寒…」
背を丸めて思わず呟く。
ヘンドンマイアの中央に飾られた、大きなクリスマスツリーが目に入る。
冒険者がツリー目掛けて雪玉を投げているのを横目に、街を歩く。そんな必死に雪玉投げたところで、キューブのかけらが5個降ってくるだけだ。




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