Short

□Cigaret Lover
1ページ/1ページ

「ちょっとレンー、煙たいんだけど。マルバスの従者がヤニくさくなる」
1本吸い終わって灰皿に押し付けたと思えば、また次の煙草を懐から取り出し火を点ける。
朝からこの動きを何度も繰り返し、今また新しく1本の煙草に火を点けようとしたレンジャーに、メカニックが不満気に文句を言った。

「肺ガンになるよ、肺ガン」
「………」
レンジャーは黙って空気清浄器のリモコンを取り、『強』に設定した。
部屋がヤニで汚れたら嫌だと、ランチャーが少し前に買ってきたものだった。

すぐ横で昼間から酒を煽るスピッドファイアを見て、レンジャーは手元にあったロックグラスを差し出した。
「スピ、酒くれ」
「ん、」
注がれたウイスキーにアイスペールから氷を浮かべ、横にあるピッチャーを見て中を覗き込んだ。
「これ中身は」
「ジンジャーエール」
「………」
無言でピッチャーを戻すレンジャーを見てスピッドファイアはケラケラ笑った。

「レンも昼間から酒かよ」
そんな2人にランチャーが冷たい目線を送るがお構い無し。
昼間から酒を煽る2人に呆れながらも、ふとレンジャーの右手にある煙草を見てランチャーは顔を上げた。
「レン、お前値上がりしてから煙草減らしたりはしないのか」
ランチャーを含む非喫煙者には全くの無関係だったが、3ヶ月ほど前に煙草が一斉に値上がりしたのだ。
「………」
ランチャーに短く視線を送っただけで答えようとしないレンジャーに、煙草を減らすつもりはないんだなど、ランチャーは理解してソファーに体を沈めた。


「なぁレン。お前、煙草か酒どっちか止めろって言われたらどっち止めんの」
酒をいくらか呑んだと思えば煙草を口にする。以下繰り返し、という状態のレンジャーに、今度はスピッドファイアが聞いた。
レンジャーは煙草を手にしている右手を一瞥。
「……これを止めるつもりはない」
「酒より煙草なんだ」
「…そうなるな」
「へー」
自分から聞いておいて気のない返事をするスピッドファイアだったが、また顔を上げた。
「女は、女。煙草か女だったらどっち」
「………」
その質問を聞いてレンジャーは押し黙り、ソファーにいたランチャーは呆れたように短くため息をついた。
「なぁ、どっち。ちょっと気になるじゃんか」
「………」
「レンー、答えろよ」
「………」
「レンー、なぁってば」
完全に黙ってしまったレンジャーに対し、よほど答えが気になるのか、スピッドファイアがしつこく食い下がる。
レンジャーはそんなスピッドファイアを一瞥し、グラスに残ったウイスキーを一気に呑み干すと、少々乱暴にグラスを置いた。
レンジャーの動きを目線で追いかけるスピッドファイアに、呟くような声の大きさで、ようやく答えた。

「……人間止めるわ」







─Cigaret Lover─


値上がり前日に、何ヵ所も店を回って煙草を買い漁った記憶がありますo
(自分用じゃないです)




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ