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□Oh My God!
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女か酒かと聞かれたら、酒。
酒か煙草かと聞かれたら、煙草。
さほど女に困った事はないが、それよりも酒を手放す事はない。
そして更にそれ以上に、煙草を手放した事もない。
呼吸をするのと同じような、ごく自然なポジションに煙草がある。




「レン、煙草吸うと鼻毛伸びんだぜ」
「…っ、…」
スピッドファイアの予期せぬ発言に、レンジャーは危うく噴き出しそうになった。
「お、珍しく崩れた、ポーカーフェイス」
普段からあまり表情を崩す事のないレンジャーのその反応に、スピッドファイアがケラケラと楽しそうに笑う。
レンジャーはただ呆然と、いま正に右手にある火のついた煙草を見た。
「…それ本当か」
「嘘言ってどーすんだよ。鼻毛って鼻ん中にゴミが入らないようにあんだろ?んだから煙に反応して、伸びんだってさ」
「……マジかよ」
煙草を吸い始めてから数年、初めて知った事実にしばし呆然。
「今まで毛の伸びるスピードの早さとか、気づかなかったのかよ?」
「…全く気にしてなかった」
吸う前と吸い始めてから、特に変化を感じた事はなかった。
気づかなかっただけで、街中にいる時や戦闘中、自分の鼻から鼻毛出てたら最悪だな、とレンジャーはテーブルに突っ伏したくなった。
「安心しろよ、俺レンが鼻毛出てんの見たことねーよ!」
他人事のスピッドファイアはゲラゲラと大声で笑う。

無口で無愛想。
近寄り難い雰囲気を纏うレンジャーだが、その整った顔立ちから女性からの人気は高い。
共同生活をしている4人の中で、恐らく1番モテているのはレンジャーだ。
もっとも、本人は言い寄ってくる女性に興味はないようだが。

「モテ男レンの鼻から鼻毛とか超ウケんだけど!やべぇ笑ける!ツボだツボこれ!」
ツボにはまったらしいスピッドファイアが腹を抱えて笑い出す。
話が始まってから笑ってばかりいるスピッドファイアに、いい加減黙れ、と蹴りを入れようとしたところでランチャーが部屋に入って来た。
「ちょ、スピ。うるさいんだけど…寝れねぇよ」
納品クエストの締め切りに追われたランチャーは寝不足らしく、目が半分しか開いていなかった。
「あっはは、悪ぃ悪ぃ!だって鼻毛っ鼻毛!」
「なにラリってんだよ…」
「煙草吸ってる奴は鼻毛伸びんの早ぇって話してたんだよっ!だからレンが鼻から鼻毛出てたらウケんのにって話!」
「鼻毛でそんな笑えるなんて幸せな男だなお前…」
馬鹿馬鹿しい話の内容に、半ば呆れたようにランチャーはため息を1つ。
だがその次にランチャーから発せられた言葉に、レンジャーはまたテーブルに突っ伏したくなった。

「…煙草吸う人は、鼻毛だけじゃなくて耳毛も伸びるの早いって聞いたけど」







─Oh My God!─


鼻毛鼻毛とうるさい話ですみません...o




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