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□誤解です。
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その日ランチャーは、事前に約束していた喧嘩屋と共にダンジョン制圧をしていた。
特に問題なく数箇所のダンジョンの制圧を完了した頃には辺りは暗くなり始めていた。
暗くなってからは、1人じゃ危ないから、と、ランチャーが喧嘩屋を家まで送るのは毎度の事だった。
そして喧嘩屋の家までの道のりの最中、ランチャーはとんでもない話を喧嘩屋から振られた。

「あの、さ…。噂で聞いたんだけど…」
喧嘩屋が何やら切り出しにくそうに、歯切れの悪い調子でランチャーを見上げる。
「ん、何?」
「ラン君て、レンやスピやメカと4人で共同生活してるだろ…?」
喧嘩屋はランチャーの事を『ラン君』と呼ぶ。
普段、喧嘩屋は男性の事は必ず呼び捨てか、『おい』、『お前』などと呼ぶ。
だがどうやらランチャーに対してだけはそういう呼び方が出来ないらしい。特別だから、だろう。
ランチャーの事を『ラン君』と呼ぶ喧嘩屋の姿は周りにはひどく滑稽に見えるのだが、幸か不幸か、肝心のランチャーは違和感を感じていないらしい。
「もちろん、これは噂なんだけど…」
相変わらず言いづらそうに喧嘩屋が念を押して続ける。
ランチャーは喧嘩屋が何を言い出すのか全く検討がつかず、きょとんとするだけだった。
そして、とんでもない話が飛び出した。

「…4人が…どういう組み合わせか知らないけど……、デキてるって…本当…?」

「………、…ぇ……えっ!?」
ランチャーの想像を遥かに超えた発言。
…デキてる?それって、つまり恋愛関係ってこと?いやいや、男だよ全員。俺を含めて全員男だよ!
「ほ…本当なのか…?」
心底聞きづらそうな表情で見上げてくる喧嘩屋に、ランチャーは唖然と口元を歪ませた。
「いや…あの、えっ?…おかしくない?…えっ?なに、…えぇっ?」
状況が全く掴めない。
何から突っ込んでいいのか分からず、しどろもどろになるランチャーに、喧嘩屋は涙目になって慌てて口を開く。
「ほっ、本当でも、周りに言ったりしないから!…悪い…ご、ごめん!」
涙目になりながら申し訳なさそうに謝る喧嘩屋に、ランチャーは危うく鼻水が噴き出そうだった。
これは、とんでもない事になってる。




「腹減ったぁ、誰か飯作れよ」
「昨日僕作ったよ」
「じゃーレン作ってよ。腹減った、死んじゃう」
「……なら死ね」
「ひでぇ。……ん?」
共同生活の一軒家のリビングで、気の抜けた会話を交わす3人の耳に、慌しい足音が入ってくる。
続けて玄関の扉が乱暴に開けられ、間もなく息を切らしたランチャーがリビングに飛び込んできた。
「なにお前。ハイになってんの?」
「ランおかえりー。」
スピッドファイアの言葉は完全無視して、メカニックには、聞こえた、という意思表示で手を上げる。
「ちょ、あのさっ、…ハァっ…苦し……っ」
話したくても息が切れてうまく話せない。
「なに、ついに喧嘩ちゃんとヤったの。」
「っ…違ぇ。つか意味わかんね、死ね、」
「どいつもこいつも俺に冷てぇー。」
深呼吸を繰り返し、ようやく落ち着く。
「…あのさ、…俺ら4人が組み合わせがどうあれ、デキてるっていう噂立ってたって、知ってた…?」
「ッはぁあああ!?」
予想通り、間髪入れずにスピッドファイアが大声をあげてソファから立ち上がった。
メカニックは目が点に、レンジャーは特に反応せずに煙草の煙を吐き出す。
「ちょっ、どういう事だよ、なんだよそれ!誰に聞いたんだよ!えええぇ!?」
スピッドファイアがパニックになって騒ぎ出す。
「喧嘩ちゃんから聞いたんだよ。…なんでも、結構広まってるって」
「おかしくね!?この中に女はいねーよ!?男!男!男しかいねぇつまんねー場所だよ!?」
「…スピ、うるせぇ」
あまりの大声に、レンジャーが低い声をスピッドファイアに向ける。
スピッドファイアは深く息を吐いて、げんなりとソファにもたれかかった。
「それって、僕たち4人がホモじゃないかって噂されてるってことだよね?」
メカニックが上手くまとめて、ランチャーが頷く。
「ありえねぇ…なんだよその噂…誰だよ立てたの…。意味わかんねぇ…俺は女の子が大好き過ぎるイケメンだよ…。それがホモってお前…」
「なんか、男4人で共同生活してるから、怪しいって話から始まった、らしい」
「家賃安くなるからだっつの…ほかに何もねぇよ…いい物件逃したくなかったからだっつの…。おいおい、おいおい…」
スピッドファイアがぶつぶつぼやきながらソファに顔を埋める。
メカニックは困ったなぁ、と、いうような表情でランドランナーを突っつく。
唯一、全く驚く素振りのないレンジャーにランチャーはもしや、と、尋ねる。
「…レン、もしかしてこの噂知ってたのか?」
レンジャーはランチャーを一瞥して、短くなった煙草を灰皿に押し付けて煙を吐き出す。
「…だったらどうした」
「知ってたのかよレン!?」
レンジャーの発言にスピッドファイアが跳ね起きる。
「…そんなくだらねぇ噂、放っときゃ消える。馬鹿馬鹿しい」
レンジャーは面倒そうに立ち上がり、コーヒーを煎れにコーヒーメーカーのあるキッチンに向かう。
レンジャーの言う事も一理あるな、と、メカニックは納得したようにランドランナーをいじる作業に戻る。
だがスピッドファイアは納得がいかないようで、嫌そうな顔で唸っている。
「そりゃ、事実じゃないんだしいつかは消えるんだろうけどさ…」
それ以上に嫌そうな顔をしているランチャーがぼそりと続けた言葉に、スピッドファイアは盛大に噴き出し、メカニックは呆然、レンジャーは小さく鼻で笑った。

「…俺が、…なんか、…受け、らしいんだよね…噂では……」






―誤解です。―

BLだとレンスピ(デスペジェネ)以外では、ラン(ブラ)受けが主流っぽいですねo 何にせよ読む分には好きですo
4人で共同生活、というちょっと怪しいとも取れる設定なのでフォローのために書きましたo



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