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□素直じゃないけど、
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スピッドファイアは今日も頼まれた依頼を問題なくこなし、帰りがけに月光酒場に入った。
酒は好きだし、酒場に集まる女もいい。イイ女は目の保養にもなるし、運が良ければお持ち帰り出来る。…少し前までは。

いつも通りカウンターに座りウイスキーを煽っていると、すぐ隣で少々煩い音を立ててリボルバーの収納されたホルスターがカウンターに下ろされた。
当たり前のように隣に座った、よく知る男を横目で確認する。レンジャーだ。
「…お前女ができたんだって」
「ぶっ…!」
スピッドファイアを見ることなくいきなり放たれたレンジャーの言葉に、スピッドファイアは思わずグラスの中で吹き出しかけた。
「っな、…どこで聞いたんだよそれ」
「ん、別に。結構流れてるんじゃねぇの」
「……まじかよ」
驚いてレンジャーに尋ねれば、返ってきた言葉に頭を抱える。

女ができた。
相手の女の良し悪しにもよるが、通常なら喜ばしい事だ。
確かに女はできた。
だけど、今回は素直に喜んでいいものか少々引っ掛かる。
今まで付き合ってきた女と比べると、今回の女はかなり異色だ。
そもそも女、と表現していいものか、それも怪しい。
「…ま、いいんじゃねぇの。本気なんだろ」
「……んだよ、それ」
「お遊びでガキと付き合わねぇだろお前」
……相手までバレてらぁ。
さいあく。

「はあぁぁー……」
深いため息をつく。
ガキ、ね。
確かにガキだ。
俺の女……いや、彼女、…。

『決めた。付き合うぞ、俺達』

付き合うぞって言ったのは俺だけど、……。
まさかあんなお子様とセックスからのスタートをするなんて、最初は思ってもみなかった。
やたら背伸びをしている、からかいやすくて面白いお子様。そう思ってただけだった。
そんなお子様とまずセックスって、──もしかして俺、ちょっとまずい人じゃね?

「…俺ロリコンじゃねぇんだけどなぁ」
グラスを弄びながら、スピッドファイアが唸る。
ウイスキーのボトルを開けながら、レンジャーはスピッドファイアを見る事なく応える。
「知ってるよ、んな事。別に疑ってねぇよそこは」
レンジャーとスピッドファイアの付き合いは短くない。
お互いの女の趣味も知っているし、お互い過去の女がどんな系統の女だったのかも把握している。
スピッドファイアがロリコンじゃない事くらい、言われるまでもなくレンジャーには分かる事だ。
「でもさぁ、まさかあんなお子様と付き合うとかさぁ、想像しねぇじゃん。………レンはお子様とセックス出来る?」
「…………」
「…よせよ沈黙。沈黙がダントツきついっつの」
黙ったまま、謝罪のつもりかレンジャーがスピッドファイアにウイスキーのボトルを傾ける。
サンキュ、と短く応えてグラスを差し出すスピッドファイア。
注がれていくウイスキーから視線を外し、スピッドファイアは何気なく酒場を見回した。
するとちょうど酒場の端、壁に近い席に座っていた大柄の男が勘定を済ませて立ち上がり、店から出ていった。
「…あ?」
その大柄の男のせいで今まで見えなかったが、壁際の席にいる、見覚えのある姿が目に止まった。



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