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□イントリーグ
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深い眠りから目が覚めて、けれど緩やかな眠気からはまだ抜けていない状態。
その状態で、シーツにくるまってゴロゴロするのが好きだ。
これは全人類共通の幸せだと思う。


「マイスター、おーい」
なのにさっきから、ゴンゴンと部屋の扉を叩く音がうるさい。耳障りだ。
本人はノックのつもりだろうが、ただの騒音だ。
扉に鍵なんてかけてない。騒音を生み出す前にさっさと開ければいいんだ。
「入っぞー」
そう思っていたら、本当に扉が開けられた。それはそれでちょっと苛つく。勝手に開けるな。
続けて、ずかずかと部屋に入って来た足音が止まり、ベッドの傍らに人の気配が漂う。
「死んでんの?」
そう言いながら、目にかかっていた前髪をどけられる。
質問がおかしいでしょ、僕が死体だっていうのか。じゃあきみは死体と共同生活してるのか。
「……うっさいよ…」
せっかく心地好い時間を楽しんでいたのに、とようやく眼を開けてギロリと睨むと、彼は笑った。
「悪ぃ悪ぃ。だって3日も閉じ籠ってるもんだから。もしかして死んでんのかなってね」
「…いつもの事でしょ、そんなの…」
マイスターである自分は、新しいメカの研究やら改良やらであまり部屋から出ない。
確かにここ3日間はトイレや食事の調達以外に部屋を出た記憶はないが、そんなに珍しい事ではないだろう、と思う。
「…ジェネラル」
「んー?」
「ジュース飲みたい、取ってきて」
ムカついたから使いっパシりにしてやる。
さすがに怒るかと思ったが、彼──ジェネラルは分かった、と言って部屋から出て行った。ちょっと気味が悪い。
ジェネラルが出て行ってもベッドから出る気にはなれず、相変わらずだらだら。幸せ。

「…ほらよ」
しばらくしてジェネラルがグラス片手に戻って来た。
グラスに入っていたのは紅茶のような色の飲み物。
「ありがと」
紅茶?りんごジュース?
まぁいいや、と特に何も考えずにグラスを煽った。
ニヤニヤ笑うジェネラルが視界の端に映った、その瞬間。
「―ッ!?ゲホッ、…っげほ!」
嚥下した瞬間、喉に焼けるような熱が走り、きついアルコールの匂いが鼻を通った。
「ちょっ、なにこれ!げほっげほ…!」
紅茶やジュースなんてものじゃない。洋酒だ、間違いない。しかもストレート。
咳き込む自分を見て、ブランデーだよ、とケラケラ笑うジェネラル。このチャラ男将軍、カルテルに惨殺されろ。
「もう最ッ低!なにもう、喉痛いっ…」
「はははっウケる、まじで飲むかよお前。気づけよ、気づけよ!」
「知らないよそんなの、ちょっと、ほんとムカつく」
心底楽しそうに笑うジェネラルに、半分本気で殺意が湧く。
ベッドの傍らに転がっていたコロナの起動ボタンを押し、コロナを起動させれば、ジェネラルの笑いが止まった。
「ちょ、物騒なもん出すなっつの!暴力反対!」
「うるさい…」
耳障りだ、とコロナをローリングサンダーにトランスフォームさせる。
「コロナを強化すんな!」
「強化じゃない、トランスフォーム。…去勢したげようか」
「やめて」
ジェネラルの下半身にローリングサンダーを向ければ、俺の青春はまだこれからだから、と声をあげる。
将軍にもなって何が青春だ。もう散々好き放題やったんだからいいだろう。犬や猫だったらとっくに去勢済みだ。
「ちょっと待てって」
殺意を感じ取ったのか、それだけ言ってジェネラルは逃げるように部屋から出て行った。去勢し損ねた。
電磁波を纏うローリングサンダーをラプターにトランスフォームさせ、再びベッドに横になる。
「マイスター、ほら」
二度寝しようかなと考えたところで、ジェネラルが部屋に戻って来た。てっきり戻って来ないと思っていたので少し驚く。
そしてジェネラルがパックに入ったオレンジジュースを差し出してくる。
「今度は酒じゃねーから」
見れば分かる。
「ありがと。酒だったら去勢ね」
酒ではないと分かってはいるが、わざと脅せばジェネラルは肩を竦めた。
「お前からかって去勢とか、アンフェアだ」
「かなりフェアだよ」
何がアンフェアだ。

やっぱり次は去勢してやる、と心新たにマイスターはジェネラルをベッドの上から見上げた。







─イントリーグ─


2人暮らし?そしてオチなし(´oωo)




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