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□恋愛価値観
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『…昨日、一緒にいた人誰なの…?どうして連絡くれなかったの…?』
『仕事先の人だよ。ごめんな、連絡も出来なくて…』
『本当に…?私、怖くて…』


「うっぜーこの女!どんだけ依存だよ。男もねぇわこれ!」
TV画面の中で抱き合う男女を見て、スピッドファイアが大声をあげた。
TV画面に流れているのは、所謂『甘く切ないラブストーリー』の類いのドラマだった。
だがスピッドファイアからしてみれば、『ただの依存女と、ろくに女を知らないヘボ男の幼稚な恋愛ごっこ』として映るだけだった。

「人気のドラマだって聞いたけど、なに、つまんないの?」
最初から見ていなかったランチャーが、コーヒー片手にスピッドファイアの脇に座る。
「あぁ、まじねぇわこれ。主人公2人がキモい。特に女が」
「そこまでいく」
「だって男が仕事で別の女といただけでヒステリックだぜ。男もいちいち甘やかして何がしたいのか分からん」
『このまますれ違って別れちまえ』と零し、スピッドファイアがTVのチャンネルを変える。どうやらよほど気に入らなかったらしい。
だらしなくソファにもたれ掛かりながら、ニュースのチャンネルに合わせた。
「依存してくる女とかウザいよな。一気に冷めるわ」
「んー、まぁ面倒は面倒だな」
「だろ。お互い放置プレイが1番だよなぁ」
スピッドファイアがテレビのリモコンをテーブルに放り、ランチャーを振り返る。
「こないだの女さぁ、すげー恋愛依存症だったんよ」
「え、サバサバしてていいって言ってなかったっけ」
「言った。騙された。もうまじ冷めて。ソッコー別れたわ」
「早っ」
イイ女を見つけた、とスピッドファイアが上機嫌にランチャーに自慢をしたのが10日前。
だが、どうやらもう別れたらしい。
スピッドファイアは、所謂『手のかかる女性』が嫌いだ。面倒極まりないと言って突き放す。

「どっかにいねぇかなぁ…、男の3歩後ろに下がって、黙ってついてくるイイ女」
「いつの時代だよ」
ぼやくように理想を話すスピッドファイアに、ランチャーが笑う。
どうやら『古き良き女性』がスピッドファイアの理想らしい。
その割には毎回、派手で、いかにも遊んでいそうな女ばかり選ぶ。たまに清純そうな子を選んだと思えば、つまらないと言って別れるか、相手に見放されて終わる。
「女運ないのかねぇ、俺」
「…そういう問題か?」
「そういう問題。ラン、お前は?最近どうなんだよ」
唐突に話を振られ、ランチャーは笑ってコーヒーを飲む。
「なんだよ、話せよ」
「何もないって」
「怪しい」
「ないって」
食らいついてきたスピッドファイアを軽くあしらって、コーヒーをテーブルに置く。
スピッドファイアはランチャーのコーヒーを取り、一口飲んで飛び上がった。
「熱っ!」
「飲むなよ、俺の」
「うぇぇ、火傷した火傷、絶対」
「バカ」
痛い痛いと言いながらまだ他人のコーヒーを飲むスピッドファイアの頭を、ランチャーが軽く小突く。
小突かれた頭を押さえ、スピッドファイアがようやくコーヒーのカップをテーブルに置き、ケラケラと笑った。
「なに、キモいよ」
いきなり笑いだした事にランチャーが若干引けば、スピッドファイアは再び笑う。
「いやね、やっぱ男同士の方が気が楽だなって思って」
「…んー、まぁ」
「男同士最高」
拳を握って自分の前に出してきたスピッドファイアに、ランチャーはやれやれと軽く拳を作り、角度を変えて2度合わせる。
それに満足したらしいスピッドファイアは、テーブルに放ったテレビのリモコンを取り、チャンネルを変えた。

タイミング良く、先ほどのドラマの男女の別れのシーンが映り、スピッドファイアは大声で笑った。
「ぎゃはは、案の定別れてやがる。超ウケる、ざまぁみろ!」






─恋愛価値観─


会話だらけSS.
そもそも、アラドにはTVすら存在しなさそうですよね...




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