Main 嫌われ小説
□5話
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幸村が、女をレイプしようとした。
という噂が、今飛び交っている。
「ありえない」
ありえないのだ。
幸村はただ佐藤五月に嵌められただけ。
その瞬間を俺は見ていたんだ。
幸村はただ自分の右手を触ってきた佐藤の手を軽くはたいてしまっただけなのだ。
テニスをする右手を護ろうとしただけなのだ。
俺が、そう言っても
誰も聞く耳をもたなかった。
怪我を見た、と皆が口々に言っていた。
そんなもの、少し化粧すればいくらでも作れる。
実際、俺はよく作っている。
慣れているならすぐにできるし、慣れていなくとも少し時間をとれば十分にできる。
別に、クラスメートはどうでもよかった。
同じクラスの俺が、いくらでも庇ってやれるから。
しかし、
テニス部レギュラーさえも幸村を信じていなかったのだ。
一番許せないのは、
真田、柳。
お前らは一番仲が良かったはずだろう。
そう言ったら、
「こんな汚いやつだとは思わなかった」
と返ってきた。
がっかりした。
所詮、こいつらはその程度だったのか。
落胆した。
そうか、とだけしか言えずに、その場を後にした。
教室に帰る途中、ふと、1年前を思い出した。