赤の安楽広場

□第1話
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「夢魅」

夢魅の兄冬政は縁側でこちらを楽しげに見つめている夢魅に声をかけた。


「何、兄さん?」

顔色を変えずにこにこしながら夢魅は返事をする。



「今から町へ行かないか?夢魅が好きそうな珍しい甘味をみつけたんだが…」

冬政がそう言うと夢魅は嬉しそうに顔を輝かせた。


「本当に?じゃあ今すぐ支度をしてきますっ」

そう言うと夢魅はぱたぱたと走りながら部屋に戻っていった。









「兄さん支度がすんだよ?」


「じゃあ行くか」

にこりと冬政は柔らかく微笑んだ。


そして2人は手を繋ぎながら家を出て、すぐ近くの町へ向かった。



向かう途中の道沿いには沢山の花が咲いていた。
夢魅はそれを見るのが好きでこの道は気に入っている。


暫くすると賑やかな声が聞こえてくる。


「今夜は祭りがあるみたいだぞ?」

「うん、母上から聞いたよ!」

嬉々とした表情で答える。

「そうか」

冬政は微笑みながらそう言った。



少しすると目的の店が見えてきた。
店の前に来ると冬政は1つの綺麗な袋を買って、そのまま夢魅に渡した。


「…あけていい?」

袋を興味津々に見つめながら言う。


「あぁ」


返事を聞くと早速夢魅は袋をあけた。


中には小さな紫色の簪(カンザシ)が入っていた。
紫の上には薄い桃色の曲線が描かれてとても綺麗だった。


「っ!ありがとう兄さんっ」

夢魅が嬉しそうににっこりと微笑むと冬政も微笑みかえした。


「夢魅が喜んでくれてオレも嬉しいよ」

夢魅は簪を箱に戻すと冬政の手を握った。

「そろそろ行こ?」

「そうだな」


2人は仲良く目的の店へと向かった。





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