刹那の奏者の懺悔室
□1 始まりと苦
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いつの間にか私は中学2年生になっていた。
クラスが変わったが、1年の頃仲が良かった友人とは同じクラスになった。
そして新しく友人ができた。
「おはよっ飛鳥!」
私は飛鳥に明るく挨拶した。
飛鳥は2年生にあがってから仲良くなった友人だ。
「おはよう」
眠そうに飛鳥は返事した。
「眠い?」
いつもながら私はありきたりな質問をなげかける。
「うん」
鞄をダルそうに机に置いた飛鳥は欠伸(あくび)をしながら答える。
眼鏡の奥に見える飛鳥の瞳は死んでいた。
何故いつも死んだような目で登校してくるのか本当に謎だった。もちろん聞く気も更々なかった。
「りんもおはよーっ」
飛鳥とほぼ同時に登校してきたりんにも挨拶をする。
「おはよ〜」
バレー部の朝練の後なのに飛鳥と違いりんは明るく挨拶をしてくれた。
「星もおはよっ」
「おはよう」
同じくバレー部の星も声は小さいがにこりと微笑みながら挨拶してくれた。
我ながらよく笑顔でいられるな、とつくづく思う。
もう癖みたいなものだ。この笑顔は。
暫くして予鈴が鳴った。
そろそろ来るかな、と思っていたら前のドアから上機嫌の表情を浮かべながら恵理奈がはいってきた。
「おっはよぉりん♪」
「あ、おはよう恵理奈〜」
相変わらずテンションの高いやつだ。
何であんなにテンション高いんだろ。
「おはよ、井ノ上〜」
「おはよ」
恵理奈に名前を呼ばれたので返事した。
相変わらず呼び方は『井ノ上』だった。
あまり気にしてないけどたまに思う。
仲が良いのに名字で呼ぶのってどうなんだろう……
まぁ、あいつが何も考えてないなら気にしないでおくのが一番だ。
本鈴が鳴る直前、少し不機嫌そうな顔をしながら彩斗が教室に入ってくる。
乱雑に鞄を机の上に置くと鞄をあけ水筒を出した。
「おはよ〜彩斗」
そろそろと私は彩斗の横に行き、挨拶した
「うん。おはよ」
素っ気なく返事をし、えらそうに椅子に腰かける。
ほんと俺様気質だな、彩斗って。
本鈴が鳴り席についた。
あぁまた今日が始まる…
朝の読書の時間だ。
いつもは一番騒がしい私のクラスだがこういう時には凄く静かだ。
廊下で不良の笑い声がするがあまり気にしない。
読書の時間が終わり授業が始まる前の10分間。私は自分のクラスの様子を眺める。
ある所では女子生徒が恋ばなで盛り上がり、教室の後ろの席辺りでは数人の男子生徒がボールを投げて遊び、他にもカードゲームを楽しむ男子や昨日のテレビ、今話題のバンドやユニットの話で盛り上がるクラスメイト達。
すごく平凡でありきたりな風景。みんなが楽しそうで誰もが幸せそうだった。
そんなありきたりすぎる風景の中、私はひとり自分の席でそれを眺めていた。
もしこの光景を誰かが見ていたなら私は異端だろう。
誰とも関わらずただ人を眺めている自分。
こんな自分をみんなはなんと言うだろう。
きっと友達がいない、可哀想な人。もしくは人ばかり見ている気味の悪い人だろう。
それでもいい。
他人の感覚なんてどうでもいい。私は私なのだから。
関わりたいときだけしか私はよっていかない。必要なときしか話さない。
私はそういう人間だから。
授業開始のチャイムが鳴る。
私は机の中から教科書とノートを取り出す。