新規メールを打っては消して打っては消して…そんなことを繰り返しているうちに時計の針はどんどん進んでいき、気づけば新規メールを立ち上げてから30分以上が経っていた。───送信先は同じクラスの三井君。ずっと知りたかったアドレスを(友人の協力を得て)今日やっと知ることが出来たのだ。 「あー…これで、大丈夫かな」 簡単な自己紹介とアドレスを教えてくれてありがとうの言葉を打つと、もう一度、読み直す。 「よし…!送信っと」 勇気を出して送信ボタンを押すと、送信中の画面に切り替わる。 ───が、何を思ったのか無意識に中止ボタンを連打してしまう。 送信を中止しました、と表示が出るとまた画面は元通り。 「…はあ」 友人が今のわたしを見ていたら、呆れた顔して溜め息をつくだろうな。───こんなことで情けないと自分でも分かっているけれど、なかなか一歩を踏み出すことが出来ない。だって相手はあの三井君。わたしが密かに想いを寄せている人物。緊張しないわけが、ない。…なんたって最初のメールはものすごく肝心なんだから。 「大丈夫、大丈夫…」 暗示をかけるように何度も呟いた後、深呼吸をする。───長ったらしく感じた文章を少し短くして、確定ボタンを押す。 普通に友人に送る気持ちでいけばいいんだから、と何度も自分に言い聞かせて送信ボタンに指を伸ばした。 震える指先で再送信 メールを送ってから5分も立たずに鳴った携帯のバイブに思わず肩が揺れる。───受信ボックスを確認すると相手は三井君だった。逸る気持ちを押さえながらメールを開くと、 『メール、サンキュ。 これからよろしく頼むな』 シンプルな文章だけど自然と口角が上がってしまう。三井君からの記念すべき初メールは消してしまわないようにちゃんと保護したのだった。 title >> Largo 20110220 |