「8度7分…」 どうりで昨日から体がだるいと思った。 まさかこの終業式の日に熱を出すなんて、本当最悪。 学校への連絡はお母さんに任せて、わたしは布団にくるまった。 ───今日はホワイトデー。友達にお返しを渡すつもりだったのにな。そんなことを考えながら、目を閉じて眠りについた。 どれだけ眠っていたのか。時計に目をやると11時を少し回っていた。───もう学校は終わったのかな。連絡プリントは誰が持ってきてくれるんだろう。 そう思っているとインターホンが鳴った。 それからしばらくしてお母さんの嬉しそうな声が聞こえてきた。 どしどしと階段を上がってくる足音がドア越しに響いてくる。 ───どしど、し? 次の瞬間、ノックもせずに部屋に入ってきたのは…幼馴染みの楓だった。 「ちゃんとノックしてよ」 「めんどくせー」 「めんどくさいって、あのね───」 「これ」 楓の雑な入れ方のせいで、しわくちゃになった連絡プリントを目の前に差し出される。 「あー…うん、ありがとう…。というか部活は?」 「今日は休み」 そう言いながら楓は近くにあった椅子を引っ張ってきて、腰をかけた。───おいおい早く帰れよ。 そう言ってやろうと思った瞬間、楓の口が開いた。 「どあほう」 「な…!」 「どあほうが」 何を言い出すかと思えば、一応病人であるわたしにどあほうって。しかも2回。 そりゃ、最後の日に限って熱出すなんて馬鹿だとは思うけど。でも普通は大丈夫?って言葉が口から出てくるんだと思うけど。 「───…のに」 「え、は?」 「緊張してたのは俺だけかよ」 「え、え?」 赤い箱で軽く頭を叩かれる。 「やる」 「これ、は?」 「…お返し」 わたしの頭を叩くのに使った赤い箱は、あたしの大好きなナッツの入ったチョコレート。 まさか─── 「バレンタイン、の…お返し?」 「…おー」 「1箱、だけ?」 「うるせー」 「いつからバレンタインあげてると思ってんの。しかもホワイトデーって3倍返しなんだよ」 「知らん」 「知らん、じゃなくてちゃんと今までの分も返してよね」 マカダミアナッツチョコレート (初めて貰ったお返し。ちゃんとわたしの大好きなもの知っててくれてたんだ) title >> 揺らぎ 20110314 |