大陸西南部、巨大国家が乱立する一地方。
その中心に位置するグローエス五王朝。
他国や王朝内での多少の諍いはあるものの、世界的な視点から見れば比較的平和と思われていたこの国一帯で、ある日、不思議な出来事が起こった。
『高く澄んだ夜の静謐。
見上げる空には、月も無く、星も無く。
あるのは、遥か天上に架かる極彩色の光の橋。
それは「虹色の夜」と呼ばれる奇跡の日』
突然、夜空に現れた幾重にも重なる光の天幕。
人々はその美しさに感動し、地平の際から生まれた陽光がその光り輝く帯を払いのけるまで、飽きることなく空を見上げ続けたという。
――そして、この日を境に、このグローエス五王朝内の領土に限って、まさに「異常」といって良いような出来事が次々と起こり始めた。
遥か上空には巨大な浮遊列島群が突如出現し、ついこの間まで平凡な草原に過ぎなかった場所に鋼色の遺跡群が姿を現す。今まで狩人達を養っていた自然豊かな森は侵入者を拒む不気味な大森林に生まれ変わった。
さらに、今まではお伽噺の中でしか見た事のない、奇怪な姿をした獣や人間達が国の至る所に現れ、五王朝各国はその対処に追われる事となる。
この奇妙な出来事は噂となって大陸中を瞬く間に駆け抜け、世界各地から数多くの冒険者達がこのグローエス五王朝へと集まりはじめる。彼らは、己が目的を果たすため、己が願望を満たすために、王朝内に次々と現れる超常識的な地形、失われた技術により造り出された遺跡群へと旅立っていく。
ある者は名声を得るために、
ある者は富を得るために、
ある者は力を得るために、
ある者は未知への探求心を胸に。
──そして、新たな冒険者がまた一人、
この混沌とした小世界へと足を踏み入れる──
【暢気な日々】
【位相の刻印】