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□黒い君
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いつも通りの朝。

いつも通りの仕事。

いつも通りに君も来ると……真っ赤な可愛い君が来ると思っていた。



のだが……



「おや…久しぶりだねぇ」

「……あんまり見ないでちょうだぃ…。」


君の姿はスッピンで黒かった…。
真っ赤な髪もコートもなく、黒い髪を一つに束ねている姿。


「執事モード?」

「なにヨそれ;アタシはいつでも主人がいれば執事DEATH☆」

「じゃあ……「黒いアタシになんとかモードとか一々付けないでちょーだいッ!!」


葬儀屋が色々とモードを付けたがるのをグレルは止めると、グレルは何故今自分がこんな格好をしているのかという理由を話し出した。


「アタシが今こんな格好でいるのはウィルのせいなのヨ。」

「ウィル?」

「……ウィルったら、アタシがあんまり遊び回らないようにって一週間化粧を禁じられたついでに赤い髪も全部黒くしろって……。」


なるほど…。


葬儀屋は一人頷くと、グレルに一つ提案をしてみた。


「ねぇ、グレル?」

「なに?」

「小生達が最初に出会った時の執事モードで小生に接してみないかい?」

「なッ!?何でよ!?」

「ヒッヒッヒ、小生がグレルの主人になってあげるよ〜それなら問題ないだろぅ?」

「うッ……わかりました。」


葬儀屋は一人楽しそうに笑っていた。
グレルはというと、自分の女優魂にかけてなのか、仕方なく執事モードへと入ったのだった。



これは面白い事になりそうだねぇ〜。



「だッ…旦那、様…。」

「クッ、グフフ、なんだい〜?」

「笑わないで下さい…私に何か出来る事はないですか?」

「なんでもしてくれるのかい?」

「一応執事ですから。」


本当に、実に面白いねぇ〜案外すぐに演技に入ってる。
さすが、女優…だねぇ。
これはこれで結構くるねぇ〜。
ゾクゾクするよ〜


「じゃあ〜まずは紅茶を小生の為に入れてきてくれないかい?」

「はい…。」


君の容れる紅茶はどうも味が薄れるみたいだ。

小生ははそれをわかってて君に頼んだんだ。

主人は執事にお仕置きができるからねぇ〜。


葬儀屋は不適な笑みを浮かべていた。


「旦那様、お紅茶をお持ち致しました。えっと…アールグレイを取りあえず容れてみました。」


そこにグレルが紅茶を容れて戻ってきた。


「ありがとう。」

葬儀屋はそう一言だけ言い、紅茶を口にした。



やっぱり……。



思った通り香もとんでいるし、紅茶本来の味がしない……。

葬儀屋はしばらく紅茶が入ったカップを見つめていた…。
それを心配に思ったのか、グレルが問いかけた。


「いかがでしたか?」


グレルが心配そうに葬儀屋を見つめていた。

そんな顔も可愛いねぇ〜って違う違う。

「うん、紅茶本来の味がしないよぉ〜ダメな執事くんにはお仕置きが必要だねぇ〜」

「すッすみません!!すぐ容れ直してきますぅ!!」

と、グレルはまた入れ直しに行こうとするが、葬儀屋はそれを止めた。

「待つんだよ、君にはお仕置きを受けてもらはなくちゃいけない。」

「お仕置…き?」


グレルは半ば怯えた様子を見せた。
お仕置きという言葉に何をされるのかわからない恐怖を覚えたのだろう。


「大丈夫さ、お仕置きと言ってもそんな痛い事はしない……ただ君が一週間ずっとそのままの姿というなら、今日から一週間ずっと小生の執事になってくれないかい?」

「え?」


グレルは葬儀屋の言った言葉にそんなことかと間抜けな顔をしていた。


「それ…だけ?あっいや、それだけです、か?」


思わず地を出してしまったグレル。

それに葬儀屋は微かながらま笑っていた。



「それだけじゃ、物足りないかい?」

「いや、別に私はそんなッ」

「じゃあ……」



『小生に極上のキスをしておくれ』



「ッ!?///」


それを聞いたグレルはこれでもかという位に真っ赤に染まっていた。

黒い君に赤く染まった顔。

それはそれで可愛い。


葬儀屋はそう思いながらグレルに再度問い詰めた。


「執事くんは、主人に逆らうのかい?」

「ッ!?………わかりました。(後で覚えておきなさいヨ)」


グレルが葬儀屋を軽く睨んだ事に葬儀屋は気付いていたが、あえて触れないことにした。


グレルは、葬儀屋の目の前に行き、目を閉じてと言う。

それに対し、葬儀屋はグレルの言う事を聞き、目を閉じた。


「んっ……。」


長い間、二人は触れるだけのキスをする。


先に離れたのはグレルだった。


「……あの、これでよかったのですか?」


少し戸惑いがちに言うグレルに葬儀屋は苦笑した。


「十分だよ、一週間執事もなし。だってやっぱり小生は黒くてもいつもの明るいグレルが好きだからねぇ」

「っ!?じゃあ!!いつも通りにしてても?」

「いいよ」


そう言うと、グレルはいつも通りに葬儀屋に接し始めた……のはいいが。


「アンタ…さっきアタシが逆らえないからって調子に乗って!!仕返ししてやるんだからッ!!」


と、言い出した。
だが葬儀屋は相変わらず笑顔のまま。

「ヒッヒッヒ、やっぱり黒くても赤くても、いつもの明るい性格のグレルが大好きだよ」

「なッ!?///」


突然葬儀屋からそんな言葉が出たものだから、グレルは怒る気すら無くした。
それどころか、また真っ赤になって口をパクパクしている。


「いッ……いきなりなんなのヨ!!」

「小生は本心を言ったまでさ〜、たまには執事の君もいいけど、やっぱりそのまんまの君が好きだよ」

「うッ///」


こうなってしまえば、もう葬儀屋にグレルは逆らえない。

しばらくすると、突然ドアが開いた。


「やはり、ここに居ましたか、グレル・サトクリフ」

「ウィル!?」

「おやぁ?お迎えかい?」


訪問してきたのはウィリアムだった。
葬儀屋の言う通り、ウィリアムはグレルを引き取りに来たのだと言う。


「グレル・サトクリフ、またこちらに迷惑をかけるような真似をして……一ヶ月間その姿でいますか!?」

「いやヨ!!それだけは止めてぇ〜!!ちゃんと仕事するわヨ!!」

「ヒッヒッヒ、またいつでもおいでぇ〜」

「……;いくら貴方でもあんまりコレをたぶらかさないで頂きたい。」

「それは悪いことしたねぇ」


ハッキリ言って小生はこのウィリアムとか言う死神は苦手だ。
小生からグレルをいつも奪っていくからねぇ。
まぁ仕事なんだから仕方ないと言えば仕方ないのだろうけどねぇ。


そう心の中で悪態をつく葬儀屋は顔には全く出さず、そう思われてるなど気付いてもいないウィリアムはグレルを引っ張り葬儀屋を出ようとした。


「じゃあね、葬儀屋♪またお仕事が落ち着いたら来るワ!!だからそれまで待っててネ♪」


なんて………、グレルは投げキスをしながら、ウィリアムとグレルは葬儀屋を出て行った。


一人残された葬儀屋は、棺に座り、先程の執事モードのグレルを思い出していた。



『旦那様』



「ヒッヒッヒ、たまにはこういうのもいいねぇ」


次、グレルに会う時はいつもの赤いグレルに戻っているだろう。
その時はまたあの美しい髪を撫でながら、たんと可愛いがってやろう。


葬儀屋はそう考えながら残っている仕事を片付け始めるのだった。


















あとがき

黒い執事モードのグレル♪
赤も黒もグレルなら可愛い♪
葬儀屋と黒グレルの絡みを書きたかったので書いてみました。

また機会があれば書きたいな☆

ここまで読んでくれた方、ありがとうございました♪
 

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