前半の海


□今宵なぜだか同じ夢を
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「あー…だけどそうだなァ…」
 我ながらやや芝居がかった調子でおれはセリフを吐いてみる。真剣なゾロがおもしれェから、おれもマジでヤキモチ焼いてるふりだ。

「鷹の目にされっぱなしじゃあクソ面白くもねェから、今夜おれとジックリやり直しだかんな!」

「う…。あー………うん」

(―――!)
 うん、って…!なんかおめェらしくねェ返事だなオイ。だけど可愛い。それも好きだおれ!!

 てゆーか…なんか客観的には、おれがうまく誘われちゃっただけみてェな?いやしかしこの天然ヤローには、これで何の計算もないんだからすげーよな。

「ゾロ…」
「あ?」
「お前ホント可愛いな」
「はっ?!脈絡なく変なこと言うなっ」

 いやホントだぜ…ショージキ、今すぐ食っちまいてェわ。


「……なーゾロ…ちょっとこっち来い。考えてみたらお前の細胞のどっかに鷹の目の記憶があるっつーのは本気で面白くねェな」

「…今まで本気じゃなかったのか?」

 あ…たまに妙に鋭い。コイツこういうとこあるよな。

「いーだろ、こまけェことは。それでお前…鷹の目にどこをどんなふうにされたんだ?」

「え、どんなふうって…」

「ちょっとそこでしてみせろよ。見ててやるから」

「はっっ?!…や、イヤだよっ」

「だって…もれなくやり直したい。全部上書きしたいんだ。その夢おれは一緒に見てたわけじゃねェから、お前に詳しく教えてもらわなきゃわかんねェだろ?」

 おれは片手でネクタイを緩めながらゾロに近づく。

「手伝ってやるからやってみな」

 自分ながら鮮やかに慣れた手つきであっという間にゾロを半裸状態にし、奴の右手の甲を上から持って遠慮なくあの部分へと触れさせた。

「んっ…」

「どうなんだよ。手の角度はどんな感じ?なんて言われたの?ほら思い出して…自分で動かしてみろよ」

 おれは興奮してきて、いくらか声が上擦った。別にそれを隠したかったわけでもねェが、そのままゾロにキスをした――

「ん…んっ、……あ…っ」

 舌を絡ませるうちに、おれに掴まれたゾロの手が、わずかだか確かな意思を持って上下し始める。

 こいつはホント日常的に鈍くて単純だが、特にセックスの時は全く素直になっちまってほとんどおれの思惑通り、されるがままだ。
 そんなこいつを見てるといつもおれは…おれは…

「上手だなゾロ…それで?解説しろよ…今どういう場面なんだ?…鷹の目は、どうなってる?」

「お、おれ…の、耳を…」

「…耳。こんなんか?」

 おれは甘噛みしてからペロリと舐める。

「あっ……んっ」

 次第に奴の手の動きが、あられもなく速度を増し始める。

「…っ……んっ…ふ…」

「……黙るなよゾロ、しっかり解説しろって…っ」

 ヤベーな…なんか乱暴にしてやりたくなってきた。


 なんだかんだ今日のおれ、やっぱ全然余裕なんかねェかも――!

END
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