前半の海


□ばれてた
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 比較的平穏な一日の夕食後、のことだった。全員まだダイニングで席についている中で、いかにも思い切ったという顔をしてウソップが言い出した。

「なあ!ナミッ。恥をしのんで正直に言うぞ!だからおれの願いを聞いてくれっ」
「…何よ突然。言うのは勝手だけど、聞くかどうかは内容によるわよ」
「うっ…いや、聞けばおめェも同情するさ。死ぬか生きるかくらい切実な問題だかんな」

 クルーは皆キョトンとしてウソップのほうを見ている。いや、船長は見ていない。彼だけはまだなお食事の真っ最中だった。

「…で?どうしてアンタが死ぬのよ?病気?」
「いきなり死ぬかァ〜っ!病気なんてかかったこともないわっ(ビシッ)」
「じゃあなんなのよ」
「ああ…あのな。明日は買い物しに陸に寄るだろ。そこでの小遣いの額を上げてくれよ!問答する気はないからハッキリ言うぞ。おれはお姉さんとイイコトがしたいんだっ。いつもの額じゃとても足りん!断るならおっ、おっ、お前を犯るぞココココノヤロー」

これには思わず船長も顔を上げる。
「ひゃあ〜勇気あんなァ〜、ウソップ」

「ってクラァ〜!!こんのエロッぱな!」
サンジが叫び、掴みかかった。
「ウソップてめェ、こともあろうかナミさんに向かってななななんて下品なこと言いやがる!何枚におろされてェんだこのクソヤローがあ!!」

「なっ…なんだよ」
ウソップは涙目になっている。
「サンジ、お前だって本音は同じじゃねェのかよ?困ってないとは言わせねェぞっ。オイッ、ゾロもだ!すかしてないでなんか言えよっ。おれだけじゃねーってことを女のナミにわからせてやってくれよ!」
「ぁあ?おれを巻き込むなよ」

 ロビンとチョッパーは何を言うべきか迷って黙っていたが、ナミは口をはさんだ。
「ちょっと!女の子の前で平気でそういう話するのやめてくれるっ?あたしとロビンは外しますから。男共だけで話つけなさいよ!
ただしっお小遣いアップを呑むかどうかは報告の内容によりますからねっ。行くわよ!ロビン」
 ナミは怒って、ロビンを引っ張るようにして出て行ってしまった。
 ダイニングには数秒の沈黙が訪れた。
とその静けさを、ポッキンと割って話し始めたのは船長だ。
「あー…ウソップ。サンジとゾロを頼っても無駄だぞ。こいつら、じきゅうじそく?ん?なんて言うんだ?とにかく毎日のように二人でヤってるから多分ぜんぜん不満ねェぞ」
「……え?」
「!!!」
ブゥ――――――ッ!!
ゾロが酒を吹き出した。実にわかりやすいリアクションだ。

 サンジはさっきからウソップの胸倉を掴んだままだったが、依然その姿勢で、呆然として口を開く。
「おま…ルフィ、なんでそのこと知ってんだよ」
「アホ!コックッ!!」
「あ…やべ」
サンジは動揺してウソップから手を離した。ウソップは、あまりのことに硬直して、そのままトスンと床に落ちた。

「あの…えーっと、いや参ったな、」
サンジは何か言おうとするがうまくいかず、ゾロは腕組みをして目を閉じている。
「ししし!」
船長は、明るく笑うと言った。
「い〜いよお、隠さなくたって。つーか隠す気あるなら普段からもっとうまくやれよ」
(うわ〜なんか、コイツにそんなこと言われたくねえ〜)そこにいる全員がそう思った。

「っていやいや男ウソップ蘇生したぞ。マジかよおめェらヤってんのかよー」

「おれは知ってたぞ」
サラリとチョッパーが言うのでゾロはギョッとした顔を見せたが、ウソップは聞こえてないように喋り続けた。
「くされやべェじゃねーかお前らー。さぶっ。ちょっと考えらんねェな…いいか、たとえどんなにやりたくて我慢できなくなっても、おれのこと襲ったら絶対絶対やだぞ」

「………フゥ」
サンジは小さくため息をついてから言った。
「あのな。お前なんか間違っても襲うか!いいか?こんなにバレてるとは思いもよらなかったが、ここにレディー達がいないのは幸いだからハッキリ言わせてもらうぞ。おれはなー、」
「おいコックッ!」
たまらないという表情でゾロがサンジのセリフを遮った。
「コックてめェ何言おうとしてる?もういいだろう、やめとけよ」
「だけど…」

「あのなウソップ」
何か言いかけたサンジを無視してゾロがウソップのほうに向き直る。
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