前半の海
□2Y
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覚悟はもう決めた。だがそれにしても二年か…
おれは空を見上げた。
「あいつは…どこで何してんだろうな」
遠くの空。やけに速く流れる雲だ。そう思ったら、途端に肌に風を感じて、ブルッと小さく身震いした。
「まあ…死にはしねえだろうけど…」
どんなもん食ってんだろな。きっとろくなもんじゃねェな。
「おれのことを思い出すことがあんのかなァ…」
女を、抱いたりすんのかな…
ああ…あんなに毎日そばにいたのに、何度も強く抱いたのに、離れてしまうとこんなにも不確かだ。お前とのことは全部おれの片想いだったような気がしてくる。
ゾロ。これってお前を信じてないってことになるのかな。お前にまた、うじうじした奴だと笑われるかな。
いや信じてないとかじゃなくて……実際おれのほうが少し多めに好きなんじゃないかなって。そんな感じだ。
ああ…
思えば、シャレにもならない恋をしたもんだ。
恋ってのは、本当に恋ってェのは、こういうふうに来るんだな。お前に会うまで知らなかったよ。こんなに理屈じゃない想いが、心を支配することがあるなんてさ。
なあゾロ、お前は考えたことがあるか?
おれ達が…もし万が一、何かあって解散するような未来が来たとしても。おれは心に決めてることがある。
全員が一人一人バラバラになっても、おれはもう一人では歩かない。おれは、お前と一緒に行く。
その先は険しい道か平坦な道か、望ましい道なのかどうか…そんなことは全部どうでもいい。
ただ目の前の道が分かれていたら、おれは迷わずお前のいるほうの道を選ぶ。何度でもそうする。
「だけどそれじゃあいちいち一緒に迷子になるだけかもな…ハハッ」
あのなゾロ、おっかねェところだぜカマバッカ王国はよ〜。
「おかげでおれのほうは浮気の心配はなしだ」
お前のことだ。無意味な二年間なんか過ごすわけがねえよな。だからきっと………これでいいんだ。
だけど……
「寂しいぞー…ゾロ」
いいだろ?ちょっと空に向かって呟くくらいならよ。
…元気でいろ。
とにかく元気でいろよゾロ。
おれもますます腕上げてみせるから。
お前が集合場所に来られんのかどうかは少なからず気掛かりだが…
まァ迷子の世話はおれがしてやるから、だいたいのところまで辿りついてりゃそれでいい。
待ってろ。
待ってる。
二年後、シャボンディ諸島で―――!
END