前半の海


□サンジの誕生日
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 驚いた。急にゾロのほうから舐めるなんて言うから。「座れ!」って、そんなぎこちなく命令されてもよ…

「ゾロ…どうしたんだ?なんかいつもと違うじゃんお前」
「…………誕生日だ」
照れてるみたいに、ぶっきらぼうに奴は言う。

「え……ああ、おれの?なんだお前、知っててくれたんだ」
その事実に、おれはもう一度驚く。
「昼間…ナミ達が言ってた」

 …ああ、お前が甲板でいびきかいてた時のことな――
「ゾロ、お前あれ聞いてたのかよ」
その質問には答えずに、目の前にひざまずいたゾロがおれに手を伸ばす。

(それで…こんなことしてくれるってわけかよ)

既にマックスまで勢いづいているそれが握られ、口づけられる…
「うっ…!や、やっぱりいいよおれはっ。嬉しいけどなんか、お前にそんなことされたら………死んじまうっ」

ゾロがおれを見上げた。おれの大好きなその澄んだ目で、まっすぐに…。それから少しきまり悪いような微妙な表情で口をヘの字に曲げながら、言った。
「……大袈裟だ。死ぬとかいう言葉を簡単に使うんじゃねェ。おれがこうやってするの…別に初めてじゃねェだろ」

ゾロはもう一度おれのそこへ唇を近づけてきた。だがおれはとっさに腰を引いてよけてしまって、代わりにそのまま、覆いかぶさるようにしてゾロのことを抱きしめた。

鼓動が、いっそう速まる――

「いや、あのなゾロ、なんて言ったらいいか…えっと…おれはっ…毎日、どんどん好きになる。お前を好きな気持ちがっ…普通じゃねェ。毎日毎日、ホントに毎日だぞ、いちいち、初恋が叶った瞬間みたいに嬉しくて………ああ悪ィ、何言ってっかわかんねェけど…つまりよ、もし昨日平気だったことだとしても今日はもうダメだっ。…おれは、今日のおれは、昨日までよりもっとお前のことが好きだからっ…なんか…なんだろうな、もうおれは、たまんねェんだ…っ」
「……」

ふいに、おれの髪をゾロが静かに撫でてくれた。その手が気持ちよくて意識がフワッとしてしまったとき、おれの体を奴が強く抱きしめ返してきた。
「あっ…」
「コック…まったくよく喋るなお前…」
「は…?」
「あのな。今お前が言ったことは、………お互いサマだっ」
「えっ」

おれは反射的に顔を上げてゾロを見る。ゾロは…目を逸らして赤面中だ。

「ゾロ…」
うっすら赤らんだその頬に手の平で触れながら、そっと唇を重ねる。

「ゾロッ…ゾロ、なんかお前、今いいこと言ったっ」
「…んだよ、ニヤけた顔すんなっ!」

 おれはゾロを押し倒し、もっとずっと深いキスをした。そこからはもう、夢中で奴の体をまさぐる―――

「ん…んっ、…あ、コック待てっ…!」
「ん…?」
「日付変わる前に言わせろっ。あれだ!誕生日、…オメデトウ」
「あ……おう、…うん」

うわ照れ臭い。
嬉しい。
ゾロのキャラじゃなくておかしい。
………嬉しい。

 うまく反応できなかった。
 ありがとう、って答えるタイミングも一瞬遅れちまって逸した…

 だから言葉の代わりに全身で答えよう。

(ありがとうゾロ、好きだ。お前が大好きだ――!)

 祝ってくれるというなら、今夜はたくさん抱かせてくれ。もうホント、離したくない!

「離したくないよゾロッ…」
「あ?……ああ、離される気もねェよ…」

 神サマ…人間の体って、病気でもないのにこんなに熱くなっていいんだっけ?

 やっぱおれは…死んじゃいそうだっ

END

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