前半の海


□今夜、秘密の場所で
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 とっくに体の関係まで持った恋人と同じ部屋に暮らしているが、そこには他の奴も何人もいる。
 ああ、もちろんそういうプレイが趣味なわけじゃなくって(当たり前だっ)、普通に考えるとそうならざるを得なかったから、っていう状況だ。

 そんなおれ達みたいな環境にいる二人って、実は世間にそうあることじゃねーよなァなんて、改めて思ったりする。
 おれの姫の寝顔を見ながら。ルフィ達のいびきも聞きながら…

――姫、だって?!“海賊狩りのゾロ”がか?
ふと客観的になると、我ながらウケる!

 だけどおれにとっちゃホントそんな感じなのよ、あいつときたら……あァやべ、一人でノロケ入ってる場合じゃねーな。


 ここはサニー号の男部屋だ。まったくもって慣れちゃあいるが、たまにふっと…「よく考えたらなんだよこの微妙な状況はっ」なんて思うわけだよ。
 奴はすぐそこにいるってのに好きなように手が出せない!

 まァ…元々こちとら海賊だし?船長はあのとおり、常に騒動を呼ぶ男だし?そんなフツウの恋人同士みてェな日々なんてあるわけないんだが。
 っつーことでいろいろとアレな欲求を抑えることにもどっちかってゆーと慣れてるんだが。

 たまに…こんな夜。どうしても気持ちがおさまってくれずに眠れない夜は、悪いがおれは遠慮なく奴を起こすことにしている。

「ゾロ…ゾロッ」
まずは小声で呼びかけ、そっと揺する。

 こういう時にまあ便利なのが、ゾロ以外の連中はちょっとやそっとの物音やら気配やらで簡単に起きやしないということだ。
 もっとも…ゾロの奴もおれの手を「敵じゃない」と皮膚認証しちまってるようで、すぐにパッと起きてはくれないが…

「ゾロ…」
おれはもう一度奴の耳元で囁き、そのままペロッと耳を舐めてみる。

「んっ……!……あ?」
「やっと起きた…」
「んー…コック?……ぁんだよ?」
「下…行くぞ、つきあえ」

 下とは。この部屋からハシゴで降りることの出来る格納庫だ。夜中にそんな気分になった時には、まァわりとよくそこに連れ込んでるわけなんだな。狭いし不便だが、手っ取り早く二人きりになれる。

「あー…??何時だ?今。…ねみぃー……」
ゾロは向きを変えてまた寝ようとした。

「おいっ、そしたら今すぐここでヤってやるぞ」
おれは奴の服の上からその股間に手を滑らせる。

「わっ…!なっ…に言ってんだてめェはっ」
「ここでこのままやられるのと、おとなしく下に行くのとどっちがいい?」
「二択かよ!選択肢おかしいだろそれっ………あっ…っ」
おれがそこを撫でる動きにゾロが反応した。

「へへっ…色っぽい声出してんじゃねェよ。誰かに気づかれちまう…」
両手で奴を抱き起こしながら、おれは言葉を続けた。
「起きろよホラ…行くぜ」



「…っ、…ハァッ、ハァッ、………う」
 補強用木材やら武器やらの格納庫となっているその場所で、立ったままおれにそこをしゃぶられるゾロが、体を震わせながら言葉を絞る。
「コックッ…て、てめェの強引さはっ…ほとんど、犯罪だっ…」
「はー?何言ってんだ?…………嬉しいくせに」
「…っ、…ゔ〜〜〜っ」

 ゾロの思考回路はとっくにブッ飛んでるはずなんだ。次の言葉が続けられずに奴は、ただその唸るような声音だけが地団太を踏んでいるかのようだった。

「だいたいなーゾロ、てめェが無法者の分際で犯罪語ってんじゃねェよ…」

 おれは口を離して、代わりにその根元のほうの袋を掌で握る。
「んっ……」

 身をよじるゾロ…可愛い。おれはわざと焦らしてやりたくなってしばらくそれを弄んでいた。が、そうするうちに奴がもう今にもイキそうな状態で弾けそうになっていたので、そっちのほうを掴み直して擦ってやることにする。

「あっ…あ、…ん…」

 そしてそのまま手を動かしながら立ち上がり、ゾロの唇に、キスをした――
「んん……ん、…は、……あっ…!」

ほどなく熱く勢いのあるものが、おれの手にドロリと絡む。
「あ…」
吐息に余韻を残すゾロがピクンと小さく震え、おれのほうもたまらない気持ちになってくる。

「ゾロ…そっち向け」
軽くその体を押して、壁に向かって手をついて立たせる。

 何度見てもゾクゾクと来る、おれの目を悦ばせるその姿。
 だってこいつは…日頃こいつは、強くなること以外なんにも考えてなくて、三刀流どころかこいつ自身が刃物であるかのように危険で、一筋の鋭い、空へも届こうかという真っ直ぐな光を放つ、強烈な―――それは強烈な存在感を纏う、野生の獣そのものなんだ。
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