前半の海


□一つのふれあい
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「なあ…エロガッパ」
「…んだとコラ!クソマリモッ」

 調理中だったおれは、入口の扉に立つ声の主に思わず包丁を向ける。

「何怒ってんだ…カワイイじゃねーか、エロガッパ」
「だったらてめェでそう名乗れっ」

 おれは刻みかけてた野菜に包丁を戻して言葉を続ける。
「おれのことは…そうだなァ…旦那様って呼べよ。ダンナだろ、てめェの」
「…ッハッ」
「あ?鼻で笑ったか?コラ」
「あー…激しく受け入れ難いぞ、その、なんだ?ダンナっていう表現は」
「フン…じゃあこーゆーのはどうだ?お前はおれの姫だから、お姫チャンって呼んでやる…ヘヘヘッ」
「いいぞ」
「ぅおいっ!いいのかよ!何ちょっと『気に入った』みてェなテンションになってんだ貴様っ」
「…冗談だよ」

(いや、わかってるけどよー…)

「………だいたい、何しに来たんだ?」
「あー…それなんだが、腹へった」
「はァ?!!」
おれの包丁は再び止まる。まったく…今に始まったこっちゃないが、この船の連中は四六時中どんだけ食うんだ――!
「いま支度中だよっ。パン耳でもかじってろ、ほれ!」
「おう、悪ィな」
「あっちょっと待て、もっとあるから持ってけ。多分ルフィがハイエナのように羨ましがると思うから、分けてやってくれ」
「おう!ごちそうさん」

 パン耳を頬張りながら嬉々としてアホ一人が去り、キッチンのドアが閉められた。

「まったく………ガキかよ…………アホめ」


(しかしあいつ、何言ってても何やってても可愛いよなァ)

…ああそうさ。そう思わずにいられないおれこそがきっと、この世で誰よりもスーパーな、「アホ」の代表選手なんだろうけどよ。

END

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