前半の海
□その優しい記憶の果てに
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「な〜ゾロォ…」
「ん?」
朝メシの後片付け真っ最中のキッチン。なぜか今日のゾロはいつまでも出て行かずに座っておれの様子を眺めている。
あんなことがあったばかりだからな、さすがにこいつも少しでもおれのそばにいたいってやつか?!
「ゾロ…今すぐしよ」
「はっ?…朝っぱらから何言ってやがる。絶対ことわるっ」
(なんだよ…そーゆーつもりじゃねェのかよ)
「つれねーなァ…昨日は可愛いかったのにな。
『ねえコックー、おれのことメチャメチャに刻んでっ。みじん切りにしてえ〜』『フッ。馬鹿だなハニー、おれは戦闘に包丁は使わない主義だぜっ』…」
「ちょっと待てコラッ!そんな会話はしてねェッ!
(つーか、てめェでてめェのことコックって呼んじまってるしっ)」
「んー…少し違ったか?とにかく可愛いかったんだよ。お前の様子が…なんつんだ?はかなげ、でよ…」
「……」
「笑えるだろ?てめェみてーなのがハカナゲなんてよ、ククッ」
「…んだよっ!笑うくれェなら勝手にそんな感想持ってんじゃねーよ。だいたい、昨日のことなんてもう忘れた」
「あっ!ワスレタって言葉使うな。おれもうトラウマだ〜それ」
「忘れたもんは、忘れたんだっ!」
…なんだそれ、無茶言うガキみてェな面しちゃってよ。そんなんもクソかわいーぞマジでっ!!!
「フフッ」
おれはもうなんか嬉しい笑いがこぼれるのを止められない。
「来いよゾロ
…大好きだ。
…しようぜ…」
END