前半の海


□また鷹の目がお頭を訪ねてきたよ、の巻
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「…で、鷹の目、無言で差し出してるそれは何だ」

 シャンクスは、何かを我慢してるような顔つきでゆっくりと言葉を絞った。

「………タコ焼きだ」

「は?……」
 首をかきながら少しだけ考え、それからもう一度ミホークを見る。

「ああ…おれ言ったな、次は手ぶらで来んじゃねェぞと。んー…けどよーお前、いくら漫画だからって、こおゆー日持ちのしねェもんは土産としてどうなんだよ。こんなモンいつの時点で購入してここまで持ってきたんだ、って話だぜ………あっこりゃ美味い!タコ焼きうまっ」


「うわ…お頭いきなり食ってる。意味不明なタコ焼き喜んじゃってるよ…順応早っ」

 遠巻きに見ていたヤソップがそう言った。


「てゆーかよォ、鷹の目…」
 タコ焼きを頬張りながらシャンクスが言う。
「なんでおれ達がどこにいようともやって来るんだお前は。七武海ってェのはデタラメだよなあ」

「………」

「それで?今日はロロノアがどうしたんだ?」

「べつに…」
無表情なままミホークが答える。
「ロロノアのことなど言ってないじゃないか」

「ふー…ん?」

「そりゃあな赤髪、ロロノアはすごく綺麗で可愛いくて色っぽくてまるで大輪の赤い花のように艶やかでこんなところにいるゴミだか人間だかわからないようなお前らとは全然違って本当に魅力的だが今日はおれはまだそんなロロノアの話なんて一言も…」

「おいおいおい待て待て待て、おれはそのセリフもっと早い段階で止めるべきだったのか?ちょっとまだノリについていけてないんだが…」

「それでは本日の議題を発表する」

「それではって唐突だな!誰なんだよお前は――
おう!誰か酒持ってきてくれ」

「いいか?赤髪、それはな、どうやったらおれがロロノアと最後まで…その、できるのか、ということだ」

「あァ?どうやったらも何もよ、そんなもんバーッと行って、ガッと押し倒して、ドンドンドーンとやっちまえばいいじゃねーか、ククッ」

「長嶋茂雄かお前は。そんなことしてな、……きっ…………嫌われたら、どうするんだ」

「はっ?!」
シャンクスは、若手の用意してきた酒を瓶ごと豪快にあおった。
「鷹の目お前…」
(心配しなくても、どっちかってゆーともう嫌われてんじゃねェの?!)


 ミホークは伏し目がちのまま言葉を続ける。

「この話を書いている水渡ゆららもだな、おれがロロノアをヤるところを見たいと思っている。おれはそう、超絶テクの持ち主だからな」

「うわ別にそれ聞いてないし!」

「おれとあいつをヤらせるために二つのアイデアがあるそうだ」

「はあ…(おれの言葉は基本シカトだよなこいつ)」

「その1。水渡ゆららさんからのリクエストです、としらばっくれて“リク作”として書く」

「あー……ないなーそれ。そんなんやったらなんでも有りじゃねェか。おれが読者なら興ざめだなそりゃ」

 シャンクスはまたタコ焼きを一つ口にほうり込む。

「それじゃあその2だ。『秘密なら』という話で途中までヤったから、次はズバリ『夢の中なら』というタイトルで、最初から夢オチ前提で堂々とヤる!」

「んー……夢オチそろそろしつこくないか?だいたいロロノアが見る夢だろう?そこは普通にサンジとヤらせてやれよ」

「……あのコックの小僧は気にくわん」

「ハイ“気にくわん”来たっ。お前がそんなこと言えた立場かどうかはともかくな、何がどう気にくわんのか言ってみろ」

「…だ、だってな、奴はあんなこともそんなこともシテるし、それに…見た目も可愛いし…」

「誉めちゃったよオイ」

 ミホークは黙り込み、おもむろに小刀でタコ焼きを刺した。

「何っ?そのちっさいのマイ楊枝か?」

 思わず突っ込むシャンクスだったがミホークは何も答えずモキュモキュとタコ焼きを食べた。

「まァ…いいけど…鷹の目、お前はそうやって悶々としてるのがいいよ」

「他人事だと思って…サラリとひどい奴だ」

「だってもともと横恋慕だろ」

「…フン…!自分がうまくいってると常識的なことを言うもんだな」

「は?」

「ベン・ベックマン。向こうで睨んでる。あれが相手なんだろう」

「よせよ…お前とそんなこと話す気ない」

「その腕じゃやりにくい体位も多かろう」

「やめてくれって」

「あ〜…おれもロロノアを抱きたいなァ」

「…だんだん恥も外聞もないキャラになってきてるけど大丈夫かお前」

「うまくいったら報告に来る」

「もう来なくていいよ」

「来ると言ったら来る…照れることない」

「おまっ……その性格直せ!」


「お頭…楽しそうッスね」
遠くで一人の新入りが、普通にそう笑っていた。

END

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