前半の海
□サニー号的座談会
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夕メシが済んで二時間ほど経った頃。おれ一人のキッチンにいきなり入ってきたゾロは、まァ、風呂上がりなんだろうなってことは見ればわかるがそれにしても…
「何だよその無防備さ。危険な奴だなァ」
腰に短いタオル一つ。全体的にまともに拭いてこなかったのか、その髪や肌からポタポタと滴が垂れている始末だ。
「…飲みモンよこせ」
(あァ?!)
「なんだその言い草ァ!上等じゃねーかてめェ、んな威張られる筋合いねェぞ」
…などと、とりあえず言うもののおれは冷蔵庫からゾロ用ドリンクのボトルを出して、グラスと一緒にテーブルへ運んでやる。
いや本当は何も言われなくたって、こいつが何しに来たかなんて毎回ほとんどわかるんだ。風呂とジムのあとはこれさ。だけど今は…あんまりすげえカッコしてるもんだから驚いたっつーか…つい一歩が遅れちまった。
「コック…おれは男だ」
(―――は?)
「そうじゃねェと思ったことは一度もないが…?」
「それに強ェ!」
「…?なんだよ、何が言いたい?」
「無防備だと危ねェとか、そんなこたァ考えたこともねーよ」
「……あー…そこ食いついてたんだ。んー…お前は多分、知らねェんだ」
…自分が、“誘う体”だってことをな。
あ〜けどまあ確かに、ゾロをレイプできるような腕っぷしを持ったクソヤローはこの世にそうそういるはずもねェから結果的にこいつは無事ってことになるか。
「…おれが、何を知らねえって?」
「んー…まァ、いいよもうその話は。おい、ちょっとこれとるぞ」
「え…っ」
おれは奴の腰からタオルをほどいて、そのままそれを使って髪をワシャワシャと拭いてやる。それから、濡れた体もあちこち丁寧に拭いた。
「あ〜あ〜。これじゃ風呂からここまでそこらじゅう水浸しだろ」
「船だから水には強いだろ」
「開き直んなバカ!」
「いや、てゆーかコック、こんなとこでいきなり人のこと全裸にしときながら涼しい顔してんじゃねーよ」
「あ?今さら何言ってんだよ…つーか何、お前おれにどんな顔してほしいんだ?(ニヤニヤ)」
「あ…!違うっ…別に…そんな意味じゃねえ!…その、当たり前みてェに何してんだっつーか…」
「ってかよォ、最初っからほとんど全裸だったようなモンじゃねェか。レディ達に失礼だぞお前」
…にしても。
何度見ようともマジでなんつーか…
「綺麗な肌してんなァお前…」
おれは手の平を、奴の心臓の上あたりにピトッと密着させた。
「は……」
そしてそっと、唇を合わせるだけのキスをした。
(…あ―――)
「へェ…ゾロお前、これだけでもう、こんなになってんだ」
「――!バッ…、いきなり握るなっ」
慌てる可愛い顔。途端にたまらなくなっておれは、強い力でゾロを抱き寄せた。
「…っ……あ、コック、……お前だって…」
そしてもっと、もっと深いキスに引きずり込まれてゆく――
「んっ…けどコック、ここじゃダメだ……まだ時間早ェし、誰かが…」
『来ねェよ。この時間は…誰も来ねェ』
ウソップ(以下U):
…ってセリフをサンジがよく言ってるけどよー、あいつらの声が外まで聞こえるから、おれ達ァ遠慮してキッチンに入らないだけだって、ちゃんと教えてやったほうがいいんじゃねーか?
ロビン(以下R):
あらそんな…。そのくらいのプライバシーはこのまま守ってあげてもいいんじゃない?
ナミ(以下N):
プライバシーって言うならもっと日陰者は日陰者らしく振る舞っててほしいわよね。あんな堂々とされてたらキッチンに行きたくても行けないじゃない
U:や、日陰者ってお前…
チョッパー(以下C):
いいなあ、ナミとロビンは鍵付冷蔵庫の暗証番号知ってるんだもんな。…おれは番号知らねェから、よく考えたら結局メシどき以外キッチンにあまり用事ねえや