前半の海
□ちょっと肌寒けりゃすぐもう恋しくて
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「ん…?」
キッチンから一人出てきたサンジが、タバコを取り出しながら空を見上げる。まだ夕方とは呼べない時刻だったが辺りはほの暗い。
「小雨……か」
ポツンと冷たい滴の落ちた頬を拭いつつ甲板をキョロキョロと見回す。
(あいつの居場所は――…あそこだな)
サンジは展望室に焦点を定めた。
「オ〜ッスいたいたゾロ!」
「あ?」
どうやら腕立て伏せらしいことをしていたゾロは、それまでの動きを止めることなくジロリとサンジを見た。
「相変わらずだねえ。どのくらいここにいるんだ?」
「…一時間くれえ、かな……」
「よしっ!んじゃそろそろ休憩だな」
「は?勝手に決めんな!」
「んー…ちょっと付き合えよ。おやつも持ってきたからよ。今、外さみーんだよ。おれ、なんつーの?人肌恋しくてここに来たってゆーか…」
「人肌だァ…?」
ふとゾロが静止した。
「………え、何?わかりにくいけどもしかしてヤキモチ?“ゾロ肌恋しい”って言わなきゃダメだった?」
「なっ…!バカ!んなこと思うかっ。人肌がどうとか、ま〜た軽いこと言いやがって…って、呆れただけだ!」
「(お?こっち来た)ふう〜ん…ま、どうでもいいけど…。なーゾロ、膝枕してくれよ」
「あん?!?!」
「ひーざーまーくーら」
「や、…しねェよ」
「エ〜ッしようよ、してほしい…ちょっとの時間でいいからさァ〜」
「……………。ハンッパなく固ェぞ。昼寝どころかむしろ苦行?なんか嬉しいか?それ」
「何言ってんだ、めっちゃ嬉しいに決まってんだろ。なんでそんなこともわかんねーんだおめェは」
キッパリとそう言い放つサンジにゾロはどうにも言葉を失って、プイッと背を向けたと思うとトレーニング用具の元へ戻ってしまった。
「あれ〜?もしもしゾロ君?今の話の続きは?」
すっかり無視を決めこまれたので、渋々とサンジは座り込んでゾロの様子を眺める。しばらく展望室には沈黙が訪れていた。…が、ふっと不自然な音に気がついたゾロが猛烈なる形相で二度見をしたその先には―――
「な……コッ…ク何っ…お前、何してる…」
「は?…っ、…見ての…とおりだけど…言ったほうが、いいか?…僕は、自慰行為を、…っ、していまー…す」
「やっ……お前な」
しっかりとゾロのほうを向いてその部分を扱くサンジの姿に面食らう。
「だってゾロ…おれ言ったろ?…ハッ……構ってほしくて来た、って…そんで…お前のこと見てたら…も、我慢でき…ね…」
「…何言ってんだっ…動物かよ!」
「あー…いいよもう、お構い、なく……んっ…」
「お構いなくって…」
「あ…けど、出したモンは…ゾロ、おめェの顔に…つけてやるぜ…ヘヘッ…」
「……………
………それはよせ」
「――――っ!…あ」
突然。そうサンジにとってはもちろんだがゾロ本人すら思いがけず、気がついたらいきなりしゃがみ込んでサンジのその熱い塊を口に含んでいた。
「はっ――…ゾロ…ッ?―――」
グチュグチュと大きく音を立てながら口全体でそれを擦り、何度も繰り返し吸い付く――
「…っ…あ、…あっ……ゾ…ロ」
「んっ…、…んう……っふ……」
ゾロの髪に両手の指を絡ませながらサンジは上を向き、のけ反る――
「はっ……あっ………っ」
「ん……」
「うっ…ハアッ……もお…イキ、そ…」
まるでその言葉が決められた合図だったかのように、ゾロの口元はいっそうの熱意を込めてサンジのそこにむしゃぶりつく。
「あっ……あ――!…んっ……!!」
――小刻みな痙攣を伴って、サンジの熱がゾロの喉奥へと放たれた。
(ハア……ハア………)
「何…してんだよゾロ」
「こっちのセリフだ」
「おれのこと見てて興奮しちゃった?」
「ちげーよ!お前があんまりバカだから…つい……その、ほとんど同情だっ」
「フフン…」
ほぼ大の字に倒れていたサンジは、あぐらをかくゾロのほうへズリズリと移動する。
「へへ…膝枕だ」
「…っ!」
「…なあゾロ…お前のも、させて」
「は?…や、別におれァ…」
「あ?何つべこべ言ってんだ?」
サンジの慣れた手先がゾロを取り出そうとする。
「待っ……、お、おやつ先に食う!」
「…何いまさらもったいぶってんだよ、わかんねェ奴だな」
すでに勃ち過ぎてて、あまりにも恥ずかしい――そんなことはゾロは口に出せず、顔がみるみるほてってゆく…
「あ……電気、消してからっ…」
「…ダメ…よく見せて…」
「ん…っ、…あ…」
「ははっ、やらしーなァお前…そんなに、おれのは美味しかった?」
ゆっくりとサンジが口づける。
「あ…っ」
二人は今日も、時間を忘れてとろけ始める――
END