前半の海(-002)
□白い日
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ゾロの部室。おれはまァ部外者なんだが当たり前のようにドッカと座り込み、その着替えの様子を眺めていた。
奴が自主的に一人でやってる居残り練習。終わる頃ここへ迎えに来て一緒に帰る。それがおれの日課となって二週間ちょいってとこか。
目の前でスルスルと剣道着を脱いで、いつもの緑色のジャージに手をかけるゾロ。…ああどうしてこんなに無防備に肌を露出してくれちゃうんだろう。自分で言うのもなんだが、おれァこんなにもエロい目でお前のこと見てるっていうのによ。
…あーいや、男だかんな。上半身ハダカになるくれえ別になんでもねェことか。
だけどなあゾロ…お前のその乳首やばい。腰のラインやばい。ヘソやばい肩甲骨やばい!!
いいか?敢えて断言するぞ。お前にゃあ誰だって…どんな誰だって欲情しちまうよ!
「ってそういう自覚ねえだろォ、なあゾロお前っ!」
「はっ?!なんだよ、いきなり何言ってんだコック」
…“コック”。うちはジジイがレストランを経営している。たまにおれも店の手伝いをするなんてェ話をして以来、ゾロからコックと呼ばれるようになったのだった。
いやいや、クソ、おれがコックしてるとこなんか見たこともねェだろ!なんでそこ採用すんだ。どうして素直にサンジと呼んでくれねーんだ…
「な・ん・で・も・ねーよっ。ゾロお前、体キレイだな。すげー色っぽい」
「…っ////
知らねー。そーゆー妙なこと言うなっ…!」
おーおー。動揺しちゃって可愛いの。
初めてこいつに触れたバレンタインデー…この部室で、夢中ンなって、お互い結構盛大にイッちまったワケで。そのあとも…今日まで何度も、触り合ったり、おれがシてやったり、そーゆーのはあったけど…まだ、その…最後までは許してもらってない。
とゆーか察するにこいつ、やり方ってモンをよくわかってねえから、そのあとおれがホントはどうしたいかなんておそらく理解してねェ!!
すぐにこいつが「出してスッキリはあ〜気持ちヨカッタ!」みてェなモードになっちまうから、いつもそれ以上無理強いができねェんだよっ。だって多分…最初は痛ェ思いさせるし……
「くっそォ〜ゾロ、ガキなんだよてめェッ!」
「…あ?!さっきから独りごと多いぞ。なんなんだよヘボコック」
「貴様にヘボとか呼ばれる道理はねーよっ」
…あ。もったいない。ちょっと目を離した隙にゾロはしっかりジャージを着込んじまっていた。露出度激減。
「………。
……なァ、コック」
おっ…と、なんだなんだその改まった表情は。急になんだかしおらしいぞ?!
「…な、何?」
「ホワイトデーってのあるんだろ」
(………は?)
「…ああ、まァ、あるよな世間一般には」
「おれあんまりよくわからねェんだが、お返しってするもんなんだろ。お前は、その、…何が欲しいんだ」
(え…―――!!)
「おい……ゾ、ゾロ…」
「ん?」
「あっ…あの、おれ…今、ものすっっげえキュウ〜〜ンときた!」
「…? そ、そうか」
「ああ。それというのもお前、今日…今日は何の日だか知ってっか?」
「今日…3月、2日?…なんかあったっけ?」
「おれの誕生日」
「え」
「本当に!誕生日なんだ。その当日におめェ、好きな人から何が欲しいかって!ヤッベ、おれ今すっげうれしー。遠慮なく言うぞ?なァ!」