前半の海(-002)
□コイツら2人きりだとなんか違う?
1ページ/1ページ
「ん〜〜…なんらって〜?チョッパー悪ィ、よく聞こえなかった…」
メリーの頭の上で昼寝中だった船長が目をこすりながら緩く反応した。
「だからー、サンジが!ゾロに!料理を手伝わせるなんて言って連れてったんだよ〜。あいつらぜってえ喧嘩して食いモンめちゃめちゃにしちまうに決まってるぞ!」
「ん〜〜?…サンジがいてそれはねェだろ」
「でも!やりかねねェだろ。今もう食料の在庫がギリギリだって、昨日ちょうどサンジ言ってたぞ。やべーよ、おれ達のメシの危機だぞこれは」
「ん〜…むにゃむにゃ」
「おいルフィ聞いてねーだろ!もういいっ。おれだけでも見張りに行ってくるからな!」
「ん〜…もう腹減ったってサンジに言っといてくれ〜…」
(全くルフィの奴、誰よりも食うくせになんでメシの危機にあんなに鈍感なんだろう…)
プリプリと怒りながらチョッパーは一人キッチンへ向かった。
外側から耳を澄ます。とりあえず怒号は聞こえない。扉を少ぉ〜しだけ開けてそっと中を覗いてみると…
ゾロは大きなボウルを与えられて何かの泡立て係。その横でサンジは野菜の皮を剥いていた。
「あれ…?」
(なんか…すっげー平和な雰囲気?)
しかし作業開始からそれほど時間は経ってないだろうに、早くもゾロは飽きてるようだ。
「なあコック!な〜んかチマチマしててめんどくせェぞこれ」
「あァ?イヤんなるの早過ぎだろお前。言っとくけどソレまだまだだからな。無駄な馬鹿力たまにはこういうとこで活かせよ」
「無駄にってなんだよ本気で斬るぞてめ」
「ハッ…やってみろ。おめェがおれに触る前にオロしてやるよ」
(…ええーと。
なんて言うか…セリフと顔が合ってねえ…。なんでサンジの奴めちゃくちゃ笑顔で応戦してんだろ。あんな顔見たことねェよ…一体なんなんだこの妙な空気??)
そうこうするうちに、何しろゾロの動作が雑なため、手元の液体が不意にその頬に跳ねた。それをなんと――!!当然のようにサンジが舐めたものだから、チョッパーはいよいよ目を見開いて息をのんだ。
(???!!!)
「やっ…めとけよバカコック、これ生だろ」
「あ?てめェ、んな繊細なこと気にするタマか?つーかこのおれが、生で食っていいモンかどうか判断できねェわけねーじゃん」
そこでニヤリと笑ってサンジは続ける。
「それになーゾロ、おれは…生がスキなんだよやっぱ、生がよ」
「う…。
その言い方は、
なんか…」
「は〜ァ?おれ特別なこと言ってねェだろ。何考えてんだよおめェ…まったく、エロのことしか頭にねえのかよこの…エロノア・エロ。」
「うるっせえよ!なんなんだその無理矢理なもじりっ…二度と口にすんな!!」
「え?何?ナマが好きって言った?」
「それはお前が言ったんだろうが」
「赤くなるなよ。それはこのあとゆっくりな」
「バカッ…!このあともそのあともねーよ。おれァ別にそんな気ねェから勘違いすんな!」
「ふうーん、お前にそんな気ねえってならあれか、おれの強姦ってことで」
「身勝手か!!
するなっつってんだよ」
「照れちゃってまァ」
「『まァ』じゃねーし!」
「フンッ♪」
金髪を揺らしつつ、サンジがゾロの頭に頭突きをした。
「いてっ…なんだよオイッ寄ってくんなようっとうしいなてめェ」
「ヘッ、嬉しいくせにv」
(……………?????)
チョッパーは静かに静かに扉を閉めた。
それからフニャフニャした不思議な気持ちいっぱいのまま甲板へ戻ると、すっかりお目覚めのルフィがウソップと並んで釣りをしていた。
「お〜う!どうしたチョッパー、食料は無事だったのか?」
「うん……」
「んん?どしたんだチョッパー、すっごく珍しい生物にでも遭遇してきたような顔してよ」
(うわあウソップ…なんだかまるごとその通りだよ)
「えっと…あまりにも珍しい生物過ぎてうまく説明できねえ」
「ええー☆☆♪」
ルフィが身を乗り出してやたら目を輝かせた。
「なんか船ン中に珍しいのが入ってきてたのか〜?カッコイイ奴だったら手なずけよう!」
「いや、そういうんじゃなくて…おれもよくわかんねェんだけど一つだけ言えることは…」
「お?」
今度はウソップが眉をひそめる。
「なんだなんだ?もったいぶってどうしたってんだチョッパー」
「うん、あのな。
ともかくなんだか…今日のメシはスゲーうまそうだ」
END