2年後からの海
□ひだまり
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甲板で一人サンジが、水平線を眺めながらタバコを燻らせている。そこへ、いつものハラマキをなぜだか右手に掴んだゾロが近づいていった。
「…おいコック、ナミ知らねェか?」
(あ゙ァ――?!)
俄かに不機嫌めいた顔のサンジがギロリとゾロを見遣る。
「…なんでてめェが探してんだよ」
「あ?いちいちムッとすんなよめんどくせェな。ホラ、これよォ…」
「あん?!腹巻き破れたから縫ってもらいてえってか?てめ、なんたるクソつまんねーモンをナミさんに触らせようとしてんだ!貸してみろ。おれが直してやっからキッチンついて来い」
「え、お前直せんのか…」
まァそんないきさつがあって、ゾロはサンジと一緒にキッチンへ入っていった。
すると。意外にも引き出しのどこからかソーイングセット的な物が取り出されて、当たり前のようにそれを持ったサンジはソファーにドッカリと座るのだった。
サンジの持ち物にそんな道具も含まれていたとは全く知らなかったゾロはいくらかポカンとしながらその様子を眺めていたが、隣りには座ろうとせず、ソファーにもたれるような位置でペタンと床に胡座をかいた。
そして少しだけ首を傾げるようにして、サンジの手元に注目していた。
――それはなんということもない仕草だったはずなのに、ゾロがそんなふうにするとサンジは、何か小さい生き物が足元に擦り寄ってきたような気持ちになった。手を伸ばしてワシャワシャと撫でてやりたくなるような。
けれども今伸ばすべき手は、降り懸かってきた針仕事のために両方ともふさがっている。なのでサンジはただそっと、頬を緩めて微笑んだ。穏やかな心地だった。
「へ〜え、コックお前そんなこともできるんだな。変わった奴だな」
スイスイと器用な手つき。何やら糸を口にくわえたりするこなれた姿。それは材料からあっという間に料理を作る動作にも似て、ゾロにしてみれば魔法のようだった。
「変わった…ってお前な、こんくらい、普通できるだろ。…あーいや、このテのフツウをてめェやルフィに説くのは無駄か」
――チクチクチク。
踊るように針が滑っていくのをゾロは思わず食い入るように見つめた。
「フッ…さっきからなんなんだよゾロ、そのほうけたツラ」
「…や、うまいモンだなと思って…」
「あー?…うん、おれァできねェ事以外はなんでもできる男だかんな」
「??………そうか」
「(Σツッコミ無しか!)
……なあゾロ、…お前は可愛いね」
「あ゙ァ?!いらねェこと言うな気持ち悪ィ」
「なんで?…すげー可愛いくて好きなんだよ。なんだかんだおれにまとわり付いてくる、お前のそーゆーところ」
「…まとわり付くって何だよ。…それって別におれじゃなくてもよさそうじゃねーか」
「はあ?!なんだお前わざとだろそれ。んな、可愛いコぶったって甘やかしてやんねーぞおれァ」
…などと言いながら、すでに甘甘にとろけた顔でサンジは笑った。