2年後からの海

□七夕さまの星空デートの話。
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 深夜、甲板に大の字に寝そべるサンジとゾロがいた。何か眠れなくて、男部屋を抜け出したくて二人でいたくて…な、そんな夜。
 見上げた空には星屑の作る川が流れていて。幻想的に二人を照らすのだった。

「…綺麗だな、空」
「んー…」
「……ゾロ。寝ようとしてるだろ…部屋戻るか?」
「…いや。もう少し…このまま……」
「……。ちょっと思い出した。なんか、どっかの民話か何かなんだけどよ〜」
「あ?」
「あんな川で年に一度だけデートするんだ、その〜…なんか、遠距離の男女が」
「…??」
「一年に一度って言われてもなあ…去りがてェだろうなァ別れ際とか」

 そう言うとサンジは肘をついて半身を起こし、ゾロの頬を額をピタピタと触った。

「なっ…にしてんだよくすぐってェな」
「んー……あの“二年間”はまァきつかったけど…、こうやっていつも一緒にいられるってやっぱすげー幸せだよなあって」
「………」
「な?…ゾロ……」

 ゆっくりとその唇が下りて軽いキスをする。

「ん……っ」

 そのままサンジはゾロの胸元に吸い込まれるように、頭を預けながらまた寝転んだ。サラリと流れた髪をゾロの手が撫でる。
 
 
 

「さーさーのーはー♪さーらさらー…♪」

「コック?……何だ?」
「…その星空デートの話を初めて聞いた時に教えてもらった歌」
「へえ。………なんかいいな」
「////……そ?」

 意外にもゾロが優しい声で「なんかいい」とか言うので、サンジは静かに続きを歌い始めた。穏やかに時が過ぎてゆく。

 特に言ったこともないけど、ゾロはサンジの歌声が大好きだ。それはキッチンでの作業中、呟くように漏らす鼻歌なんかも含めて。今のように密着して歌われれば胸の上で直に喉の震えが伝わる。それだけで心がキュッとした。

 そんなことを思いながらゾロが気持ちよく深呼吸した時だった。
 サンジが急に顔を上げ、いたずらっぽい目をして言うことには…
「金銀砂子のスナゴってのはよ、よく色紙とかに金箔や金粉なんかがぽちぽちっと刷り込んであるだろ?あれのことだ。だけどその歌をおれに教えてくれた家には小せェガキがいて…口がうまく回らねェんだよな。本人は金銀砂子言えてるつもりでさ、チンチンツナゴって歌うんだ、真顔で、どう聞いても“ちんちん繋ごう”だぜ?」
「……………。」
「あれっ?面白くね?チンチンツナゴ」
「………………。」
「…とりあえず今、繋いどく?おれ達のちんちん」
 
 

(……ハア〜ッ…)
 しばらく無言だったゾロからここで長い溜め息がこぼれた。

「…いやコック、…なんかお前って……う〜ん…ホンット馬鹿だなあ…」

 ゾロがわりと本気で呆れ顔を向ける。

「あー……まァね」
 平然とサンジは頷いてみせた。
「あれはいつだ。ゾロてめェのこと、好きなんだって気付いちまった時からおれの馬鹿道は始まったんだな」
「…その前からもう十分馬鹿だったよ」
「あん?!なんで“その前”がわかるんだよっ。おれは!会った瞬間からお前のこと好きだったもん!!!」
 
 
 
 
 ……………え。


「や、…えっと、////

 ……やっぱ救いようの無ェ馬鹿だお前////」
 
 
おしまい
 

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