2年後からの海

□生まれ変わっても…?
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(…まったく―――)

 ゾロは、自分の横で倒れている金髪の蕩けきった顔を見て、何やってんだかと少しだけ笑う。

 コックの奴…。いくら竜宮城が広いからって、いくら人目につかなそうな薄暗い物陰だからって、まァ要するに通路だ。通路以外の何でもない、当然シャワーだってないこんな場所で、いきなりそういうことをしようなんて気に普通の神経の奴がなるだろうか。どれだけ無我夢中なんだよ…―――


 なぜだかそんな常識的なことをつらつら考え始め、途中でゾロは今度は自分自身に苦笑した。
 熱心に考えれば考えるほどそれは矛盾する意見だったからだ。

(ああ…、そうだな、おれもだった………)


 ゾロの視線に気がついたサンジが転がるようにして近づいてくる。そして全裸のままのゾロの腰に手を当てると、何やら不敵な顔で笑うのだった。

「……なんだよコック」

「お前こそ。今おれに見とれてただろ」

「はっ?!…いや、まったく」

「素直になれよぅ〜。さっきまでみ・た・い・に」

「うっ…うるせェ!変なこと言ってんじゃねえ」

「ハハハ…」

 なんでこのタイミングでそんなふうに笑うのか、ゾロにはよくわからなかったけれど、サンジは本当に愛しそうにゾロの髪を優しく撫でながら笑った。


「なァ…ゾロ」

「ん?」

「綺麗なところだよな…魚人島って」

「あ?……ああ…」

「…ここの歴史とかジンベエの話とか聞いてて…いろんなこと思ったけどよ……あー…いや、それらと直接関係ねェんだけどよ、ちょっとおれが…思っちまったのがよ…」

「なんだよ。前置き長ェぞ」

「うん…なあゾロ、生まれ変わりってあるのかなァ」

「……は?

 ……しらね。

 …ないんじゃねーか」



「……うん…そっか」

 サンジは静かにゾロの頭を抱き寄せる。

「…?……どうしたんだよ」

「ん?…あー、昔はなァ……ゼフのジジイの夢を守ることがおれの全てだった頃にゃあ、んなこたァ考えもしなかったのにな……ハッ、おれは…おれはよォ、…ゾロ、生まれ変わってもお前と一緒にいてえなァなんてよ、そんなこと…考えたりしちまってる」

「………。」


「そのうえなー、…そん時もしも全然違う世界とか立場に生まれてよ、お前のことわかんなかったらやだなァとか、それか、お前はそばにいるっつーのにわかんなくておれうっかり他の奴とつき合ってたらどーしようとかさ、…んなこと、考えてんだよ」

「………。」

「……」

 ゾロが黙り続けているのでサンジは決まりが悪くなって鼻の頭をかいた。
「ゾロ?呆れてんの?……ちょっと…あれだよな、乙女チックが過ぎるだろ…」

「……いや、呆れてるっつーか…」

 ゾロは顔を上げてサンジの目を見ると真面目な顔で言った。
「そんなモン、迷わずおれを選べ。ただそれだけだ」



(…………。)

「え?!…な、何が??」

「おれのことわかんねェとか、離れてるから気づかねェとか、お前なのにそんなの有り得ねーだろ」


「……………は……」

「なんにも、今から心配することじゃねえ!」




(…………おいおい…)

「お…、男らしいなァお前……今ちょっとビックリした。

 つーか、生まれ変わりとかないんじゃなかったのかよ?」

「あ?!話合わせてやったんだろうが。乙女コックさんによ」

「……ふー…ん」

 その時サンジは、泣き出しそうに震える心が毛穴からこぼれようとする、そんな妙な感覚を味わっていた。ザワザワと落ち着かない細胞達をようやく一つにして、力を込めゾロの体を抱きしめる。

「…っ…コック?」

「ゾロ……ああゾロ、すごく好きだ…」

「は?何…ちょっ、痛ェよ…」

「もっかいヤらせて…」

「―――っ!
なんなんだ突然っ結局それかお前はっ!…いつまでもこんなところで無理…っ、…あ、やめ、…オイッ………んっ……」






「あれ?」
 少し離れた別の場所。声を上げたのはウソップだ。
「チョッパーおめェ、ゾロを探しに行くんじゃなかったのか」

「すぐ見つけたよ……
 …サンジが一緒にいた」

「…………。ああ。

 はっ!!いや、それ以上詳報は要らねェぞ。話してくれるなよ」

「ああ、言うまでもねえよ。いつも通りラブラブで…まァあれだよ、あいつらホント愛し合ってんなーって」

「…フーンお前ってそんな感想言うタイプだったっけ?なんつーか…成長したんだなお前も」

「ん?…そうなのかもな」

「ま、なんにしてもあれだな、相変わらずラブラブ結構。『今年もめでてェな』ってことに今日はしておこう!」

END

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