小噺ひとひら。

小噺ひとひら。
そのうち書くかもしれないひとひら。
ただの部分的書き殴りとも言う。
◆♯ 

 




♯金木犀






あるところで言われた。


神さまだ
神さまだ
朱雀さまだって


初めて、言われた。

初めて、言われなかった。

穢れだって。穢れの片翼だって。

でも僕は何も出来ないよ。

そんなにいっぱい綺麗な言葉をくれても何も出来ないよ。

僕は、何も出来ないの。

僕の“神さま”は“紫陽花”だから

きっとそう言うだれかがいるんだよ


僕は、神さまじゃないよ





―――――――――――――




こんなこともきっとあるんじゃなかろうかと、勝手に思ってます。うん。



.

2012/10/08(Mon) 01:00 

◆♪ 

 
♪蒲公英



目の前の愛する紫陽花に訊きたいの


だけど、だけど怖くて訊けないの


この前……この間、通りすがりの妖が言ってた

「お前は人間の匂いと鬼の匂いと神の匂いがする不思議な妖狐だね。……どの人間に仕えてるの?」

って。

……ゆい姉、ゆい姉。

妖狐は、仕える者なの?

自分は、家族じゃなくて

仕える者?




――――――――――――


みたいな。

書きたい小噺のひとひら。



.

2012/10/04(Thu) 16:01 

◆† 

 
†紫陽花

※三つ芽目線。


紫陽花が自分を助けてくれたのは、まだ今よりも幼く見えた頃で


紫陽花が僕を助けてくれたのは、まだ今よりも子どもっぽくて


紫陽花が私を助けてくれたのは、まだ今よりも、今よりも小さくて


なのに紫陽花はもう戦ってた。
旅をしていて、色んな人を見ながら思う。


自分は子どもでいられてる
僕は子どもでいられてる
私は子どもでいられてる


紫陽花は、子どもでいられた?
誰かに甘えていられた?

紫陽花は、恋をしている。
だけど他の女の人たちのようにお洒落はしない。

「僕は女の子とか…あは、そんな可愛いのにはなれないから」

いつかそう言って笑った。
いつかそう言って、言った。

紫陽花を「女の子」にさせてくれなかったのは誰?
紫陽花を「子ども」でいさせてくれなかったのは誰?
紫陽花を「少女」でいさせてくれなかったのは誰?

紫陽花は、人と、妖と、鬼と戦ってた。
だからその辺の人より全然踏んだ場数が違うから、腕は立つ。

そんなのはいらなかったのに。

紫陽花は笑うんだ。
だけど笑うんだ。

「だから僕はみんなに会えて、大好きで、しあわせなんだよ」

って。

だけど知ってるよ。眠れない夜にいつも襲われてるの。
だけど知ってるよ。暴力に会った時に悲しいを胸に溜めるのを。
だけど知ってるよ。どうして、っていつも思ってるの。

大好きな大好きな、大事な紫陽花。

どうして世界は貴女に優しくないの?

貴女はとても優しいのに。

だからたくさん傷だらけなの。

………もう、これ以上傷つけたくない。

大切な雨の花。



―――――――――――――




三つ芽目線。
結は十代前半くらいに紫と遭遇してるんですよ。その時にはもう既に戦ってたわけで。身体は傷だらけなわけで。葛藤がたくさんなわけで。
だけど誰にも言わないし、泣かないので、三つ芽たちは心配で仕方がない。紫陽花がいつか壊れないか、って。
紫陽花は泣くと不安がらせると思ってるんですよ。
だけど大事な子たちの前で泣くことで大事な子たちが安心することをまだ知らない。
旅をしながら少しずつ成長すればいい。………とか思ってます。



.

2012/09/28(Fri) 21:12 

◆紫陽花を少ししあわせにしてみました。 

 
ここはどこだろう、と結は辺りを見回した。

紫陽花が咲き、蒲公英が咲き、金木犀が咲き、霞草が咲き舞う世界。

ふわふわして優しくて―――


「……!」

曖昧、な感覚――“夢”

自分は眠っているのかと自覚してぞっとした。

“彼女”が、また―――


「…?あれ?ゆい姉?」

緋織
「……夢、……じゃ…?」

しかし現れたのは恐ろしくて、触れたくなくて、囁かれれば己を殺したくなるような“あのひと”の声ではなくて、ててて、と歩いてきた可愛い、愛しい子たち。

ぱたぱた、と花和莉が走ってきて結にしがみついた。


「あれ…?どうして?……ここ…夢じゃ…」

霊力の高い――否、夢行だけが異常に高い結は感じて首を傾げる。

それぞれ異なるが、やはり三つ芽たちもそれは感じているらしく、首を傾げる。

緋織
「…おんな…じ……夢…?」


「うーん……。……ところでなんで浴衣なのかな?」

両腕を小さくあげて、紫は自分の姿を見る。

紫だけじゃない。緋織も、花和莉も結が作った浴衣や甚平を着ていた。

いつも通りの姿は結だけ。

もう一度首を傾げる。


「可愛いから良いんだけどね……不思議だね。みんなで一緒の夢を見るなんて……――!」

ふわ、とひとつ。花が加わった。

紫陽花、蒲公英、金木犀、霞草。

加わった、もう一つの花は――


優莉
「……あのね、一度……見てほしくてわがまま…しちゃいました」


もう一つの花は――――鈴蘭。

結たち四人から少し離れた所に立つ、花和莉とそっくりな、黒目の女の子。

助けられなかった、結の罪悪。

結が命を絶ってしまった、鈴蘭。

紫や緋織や花和莉と同じくらい愛しく想う、もうひとりの“三つ芽”

愛しさ、切なさ、申し訳なさ、罪悪。

それらが結の胸をしめつけて、湧き上がり、熱が喉を塞いで、瞳から雫を溢れさせた。

会いたかった。謝りたかった。

鈴蘭……優莉はくるりとまわって見せる。

結が作った、鈴蘭柄の浴衣を着て。

嬉しそうに、頬を赤らめながら優莉は笑う。

優莉
「えへへ…。…お姉さん、似合いますか?」


「…っ……ん……うん…っ…」

口元を抑えてただ言葉にならない言葉で頷く。

そんな結を心配そうに、けれど見守るように、嬉しそうに紫と緋織と花和莉は見る。

優莉は言葉を続けた。

優莉
「お姉さん、お姉さん。浴衣をありがとう」


「………ん…」

優莉
「お姉さん、お姉さん。助けてくれてありがとう」


「………っ…」

違う。違うよ。ごめんなさい。

助け、られなかった……っ…のに

優莉
「お姉さん、お姉さん。……ふたつもお名前ありがとう。私、このお名前大好きだよ。自慢だよ」

ああ、ああ。

あんなに痩せていたあの時と違う。

可愛く、可愛くふっくらして。

良かった、と思う。

嬉しくて悲しくて切なくて、穴が空いて、塞ぎたくなくて、

だってこれは、この穴は

大事な、この子を

優莉
「お姉さん、わがままふたぁつ良いですか?」


「……なぁに…?」

優莉
「みんなみたいに…お姉さんを“ゆい姉”って呼んでも良いですか?」


「…ん、…うん。…もちろん…」

優莉
「…えへへ、ありがとう。……もう一つのわがまま…」


「うん。……なんでも言って?」

優莉
「……ゆい姉…」

あの時、叶わなかった、伸ばすことさえ叶わなかったこの子の、

今、やっと伸ばせたこの子を、

優莉
「抱っこ…してください」


「…っ…!……喜ん、で…っ…。………おいで、優莉…」

紫や緋織や花和莉に捧ぐ大好きと愛しさを込めて、抱き包む為のもの。







―――目が覚めたらもうあの子の姿はなかったのだけど、


「……会えた?」

緋織
「…夢……おな、…じ…?」

花和莉
「………」

確かにみんなで会えて、逢えて。

優莉が確かに、みんなで一緒に、この中に一緒にいれたのだと感じて。

嬉しさに締め付けられて、また涙が出た。




――――――


せっかく四人分の浴衣作ったんで、夢の中で逢わせてみました。後は最近(いつも)結を苛めすぎてるんで、たまにはねー。
ただひたすら泣くんですが。

あまりに簡易なんでいつかそのうち書き直すかも……と。

紫陽花を少ししあわせにしてみました。

2012/08/29(Wed) 01:06 

◆† 

 

†紫陽花




知ってた。

知ってた。

二年前、花和莉を連れ出した時、

あの子を連れていけなかった時に、知ってた。知った。先を、悟った。

助けられない。連れていけない


――僕が、殺した


声が、響く。騒ぐ。踊る。

底で舞い、蠢く。

ひたりと触れる。



あの幼い子だけじゃないでしょう?

妖狐の母も

朱雀の両親も

お前が殺したも同然。

憎んで、忌んで、嫌って蔑みなさい。

憎まれ、忌まれ、嫌われ蔑まれなさい。

苦しみなさい、苦しみなさい。ああ、ああ、ああっ!!なんて楽しいっ!!なんて喜ばしいっっ!とっても愉快っ!!

だってお前は所詮私の娘っ!!



声が聞こえる。

声が笑う。

僕を、僕の首を絞めて、

嬉しそうに嗤う。



――――――――


はい、出ました悪夢お母さん。
結が鈴蘭の子に対して持つ罪悪につけこむつけこむ。

頑張って首を振るのが結です。



.

2012/08/15(Wed) 00:43 

◆♭ 

 

♭霞草



洗わなきゃ

洗わなきゃ

私は汚いんだから

私は臭いんだから

たくさん、たくさん洗わなきゃ



――ぽた、ぽたぽた



髪から、落ちるそれ。

ぷつ、と記憶が雑音と共に甦る。

嗚咽、悲鳴、奇声、

苦しい苦しい苦しい苦しい、助けて助けて助けて助けて

その声を、あげた誰かふたつ

口から、目から、耳から、鼻から、体中の…体中から



ぽた、ぽたぽた



て。

落ちて、落ちる

それは、もしかしたら私自身かもしれなくて

「―――――――――っ!!!!!」

喉の奥から何か叫びが迸る

だけどそれは声にはならない

だって声にすることを禁じられたから、塞がれたから

自分ですら、私ですら聞き取れない私の声

臭いんだから

あの、私を見る目たちが、まだいるようで、隣にいるようで

臭いんだから

声は出せないんだから

ふたつの理由で私に触れる誰かは

私を聴く誰かは――




「ああ、びっくりした。大きな声で泣いて――花和莉?どうしたの?悲しいことがあったの?」




声なんて、聞こえないはずなのに

私なんて、聴こえないはずなのに

私なんて、くさいはずなのに

私なんて、見られないはずなのに



どうしてこの人は聴いてくれるんだろう

どうしてこの人は触れてくれるんだろう

どうしてこの人は見てくれるんだろう




だから私はこの人が愛しくて愛しくて愛しくて、

大事で大事で大事で、大切で大切で




―――――――



だから私の聖域。私の宝。

…ですよ、と。日記の水滴に固まった理由でした。

結は花和莉が声出せなくても意志疎通には困らないんですよ、なんとなく会話は成立するんです。

…特殊能力?(笑)


花和莉ってさ、本当書きやすい子です。




.

2012/08/08(Wed) 22:23 

◆♭ 

♭霞草



貴女がいなくなった夢を見た。

飛び起きたら貴女はいなかった。


…どこ?どこ?


心臓が煩い。

煩い、煩い。

そんなに煩くしたらあの人の声が聞こえないかも知れない。

黙って、黙ってっ!

いない貴女を探して私は歩いた。




「――あれ?お昼寝してたんじゃないの?花和莉」

見つけた。

見つけた貴女。

貴女は、いた。

安心して、安心して

すごく怖くなって、怖かったんだと

今、すごく思い知った。


どこにも行かないで

どこにも行かないで

置いていかないで

置いていかないで


「ふ、わっ!?」


飛びついてしがみついて、擦りよって

貴女の肌から暖かみを感じて、やっと安心出来た。


嫌われたかと思った。

嫌われたかと思った。

そう思うとすごく怖くなった。


―――――




花和莉は本当、嫌われることを怖がる子だなあ、と。……結限定で。



.

2012/08/05(Sun) 01:33 

◆‡ 

‡闇夜



帰る場所。

を、私は私に与えてはならない。

だって、死ねと望まれた命だから。



「お帰りなのじゃ、夢」


「……お邪魔します、久遠」



だって、化け物だから。

だから



「…ここはもう夢の家なのじゃ。ただいま、で良いんじゃよ」


「…光栄です。ありがとうございます」



ただいま、は言ってはいけない。

帰る場所を与えてはならない。






夢はそう言う奴ですよ、と。

ただいまを知らない子。



.

2012/08/02(Thu) 19:17 

◆♭ 

♭霞草




臭くて

臭くて

臭くて

臭くて

私はすごく臭くて、

どろり、と融けるような気がした。

「―――――――!!!!!!」

ぞっとして、私は私の手を見て、体を見る。

融ける?融ける?融ける?

私は、臭い?

ワタシハ、クサイ?

どろり、どろりどろりどろりどろり

臭いの、臭いの。

臭い臭い臭い臭い臭い臭い臭いくさいくさいくさいくさいくさいくさいクサいクサいクサいクサいクサイクサイクサイクサイクサイクサイクサイクサイクサイクサイクサイクサイクサイクサイ――――

「…花和莉、花和莉。…大丈夫?花和莉?」

はっ、とその雫音で目が覚めて、私は目を開けた。

ばっ、と飛び起きて、自分の両手を見る。

……融けて、ない。

手だけじゃなくて体も融けてない。

だからはじめて夢だと気付いて。

ひっ、と喉が震えた。

じわ、と滴が、水が目元に溜まるのを感じた。

ああ、ああ。

気味の悪い銀目。人と鬼の間にうまれた、気味の悪い銀目。

臭い、臭い私――――“枯”

私。それが私。

臭いの、とても臭いの。

いつか、いつか――

「…ん、上手に泣けるようになったね花和莉。…嬉しいな。…泣いてくれてありがとう。可愛い可愛い、僕の大好きな花和莉。愛しい“霞草”」

ふわり、と抱きしめてくれる“紫陽花”

“枯”じゃないと名前をくれた。

臭くないと言ってくれる。

私の聖域。私の宝。

好きで大好きで、何よりも愛しい私の聖域。私の宝。

何があっても、何者からも私は貴女を守ってみせるから。

どうかどうか

嫌いにならないで―――


―――――


私の聖域。私の宝。
嫌われても嫌わない。ずっと大好きで一生大事で己が滅びても大切。

だけど贅沢を言うならば。嫌いにならないで。私の聖域。私の宝。

……結が嫌いになるわけがないんですが。


.

2012/07/31(Tue) 02:07 

◆♯ 

♯金木犀




穢れ

穢れ

穢れているから、みんなみんな僕の所為でいなくなった。

みんなみんな、僕が悪い。

穢れ、だから

穢れの片翼だから

片翼は不純、穢れ、忌み

歩いたことすらなかった僕だから

簡単に捨てることは出来たはずなのに

片翼は不純、穢れ、忌み

怖くて、怖くて怖くて怖くて

優しくしてくれたひとたちは好き

でも僕が穢れだから

ああ、ごめんなさい、ごめんなさい

どうして何も言わないの?

どうしてみんな優しいの?

優しく笑ったまま、いなくなるの?

やだ、やだやだやだ

笑ったままいなくならないで

笑ったままいなくならないで

だから貴女の笑顔が堪らなく怖くて

火が、炎が大きく膨れ上がって

貴女の腕を、焼いた

ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい

包帯で隠しているのは僕に見せないため

その包帯を巻いた手で頭を撫でないのは僕に見せないため

…ごめんなさい、ごめんなさい

不純で、穢れで、忌みだけど

いつか、

いつか―――



――――――――


片翼なので不純、穢れ、忌みの三拍子を貼られてる子。

声が恐ろしく小さいのもそれらを気にしてるせい。……みたいな。



.

2012/07/31(Tue) 00:42 

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