フリー小噺
□小噺 ―明けまして―
2ページ/8ページ
「行ってきます」
そう言って月讀さんのお家を出る私に「行ってらっしゃい」と言う二つの声。
振り替えると月讀さんと久遠がにっこり笑って私を見送っていた。
「……」
それ、が。
なんだかすごく気恥ずかしくて、私は小さく頭を下げた後、早足でそこから離れた。
――恐らく、居るなら紅玉の丘だろう。
そう予想して私は紅玉の丘を目指して歩いてみます。
……が、ですね。
「……歩きづらい」
です。
すごく歩きづらいです。
晴れ着って…て言うかお着物は歩きづらいです。
普段動きやすい服で行動している分、なんともやりづらい。
そして重たい。
思わず溜め息が出ました。
溜め息を大きく吐いて、その時に下を向いてしまった顔を再び上げて、
「…?」
上げて、みたところ。
見慣れない誰かがいました。
その人は男の人で、なんだか全部が真っ黒で…多分、人間さん。
思わず嫌な顔をしちゃった自分にもう一度溜め息を吐いて、私はその人に近づいてみました。
.