フリー小噺

□バレンタイン小噺
2ページ/24ページ

 





とある女子校の、

とある放課後。

教室の一番後ろ、窓際の席を囲んで二人の少女は椅子に腰かけていた。

ひとりはセーラー服の、長い黒髪を持った隻眼の少女、夢。

もうひとりはジャージを纏った、女子にしては少し背の高い少女、結。

夢は机に肘をついて、つまらなそうにそれを見た。


「……今年は何個もらったんです?」


「……。……わかんない」

夢がつまらなそうに見るそれを、対して結は苦笑しながら見る。

対照的なふたりが共通して見ているそれ。

それは結の机の上に置かれたパステルカラー調の黄色い可愛らしい紙袋。

そしてその中に隙なく入っているそれぞれにラッピングされた――――チョコレート。

本日は二月十四日。

つまりはそう言う意味で結に渡されたチョコレートなわけで。

数多の甘い匂いに結は苦笑するしかなかった。



.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ