フリー小噺
□バレンタイン小噺
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とある女子校の、
とある放課後。
教室の一番後ろ、窓際の席を囲んで二人の少女は椅子に腰かけていた。
ひとりはセーラー服の、長い黒髪を持った隻眼の少女、夢。
もうひとりはジャージを纏った、女子にしては少し背の高い少女、結。
夢は机に肘をついて、つまらなそうにそれを見た。
夢
「……今年は何個もらったんです?」
結
「……。……わかんない」
夢がつまらなそうに見るそれを、対して結は苦笑しながら見る。
対照的なふたりが共通して見ているそれ。
それは結の机の上に置かれたパステルカラー調の黄色い可愛らしい紙袋。
そしてその中に隙なく入っているそれぞれにラッピングされた――――チョコレート。
本日は二月十四日。
つまりはそう言う意味で結に渡されたチョコレートなわけで。
数多の甘い匂いに結は苦笑するしかなかった。
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