Z組です、天才です!

□図書館と楽譜
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―side 結希―

しんとした静寂の気持ちいい放課後の図書室。

あたしはその席の1つに座って、ケータイをいじっていた。

『…これだと、ヒロインが可愛そうかな…。
 いや、これくらいがいいかな?最近は悲恋もの書いてなかったし…』

そんなことを思いながら、自分のケータイ小説のサイトを更新していると―――

「ふぎっ!」

…後方からCDケースが飛んできた。

「ちょっとそこの痛い女子!ケータイカチカチうるさい!」

「いててて…あゆ、痛いよ。
 いくらなんでもCDケース投げつけるとか…」

振り向くと、あたしの大好きなあゆ。

不機嫌そうにこっちを見てた。

「周りの迷惑を考えれば、それくらい当然の報いでしょ。まったく…」

そう言って、視線を机の上の楽譜へ移す。

ヘッドフォンをつけて、頬杖をついて聞いている。

時々消しゴムで消して、シャーペンで書き足す。

あたしはそっと近づいて、後ろから覗き込んでみた。

「…作曲?」

「ぅおわっ!?な、何勝手に見てんの!?」

「あゆ!しー、しー!!」

あたしは慌ててあゆの口元を押さえる。

「何すんのさ!勝手に見るなよ!」

さっきよりは静かに、あゆは怒鳴った。

あたしは隣に座り、楽譜を眺めた。

…うん、当たり前だけど読めないね。

「これ、何の曲?」

あゆはコトン、と机にヘッドフォンを置いた。

「はぁ?言えるわけないじゃん。
 いい?こういうのには守秘義務ってのがあって、関係者以外には口外しないことに――って、勝手に聞くなよ!」

あゆが難しい話をしている間に、こっそりヘッドフォンをつけた。

「んー、こういう曲、好き」

「結希の好き嫌いは関係ないよ」

明るくて、ピポピポって感じの曲。

POPSなんだろうなぁって思いながら聞いてた。

「ね、これ、何の曲?」

「だーかーらー!守秘義務が…はぁ、お前に言っても無駄だね。
 絶対誰にも言わないって誓える?」

「はい、誓います!」

あゆは小さくため息をついて、仕方ないという顔で教えてくれた。

「今度、オーディションがあるの。曲と歌のね。それに出そうと思ってるんだけど…歌ってくれる奴、見つけてなくて」

「へぇ〜、だからまだ歌がついてないんだ」

「それに、まだ中途半端だしね。曲だけでも出せるけど…僕が認めた奴以外には歌わせない。
 だから、オーディションまでに歌い手見つからなかったら出さないよ」

「えー、もったいない!」

「ちょっと、結希うるさい!!」

あたしとあゆははっとして周りを見た。

図書当番の玲音さんから、「ちょっとー、うるさいよー」というお声がかかるほど響いてたみたい。

「ね、龍兄じゃダメなの?」

「はぁ?龍生ぃ?4ヶ月くらい前に聞いたけど、飛びぬけて上手いわけでもなかったし。僕は認めない…まだ」

「まだって事は、いつかは認めるんだ」

あたしがにやっとしてあゆを見ると、真っ赤になった。

「そ、そんなことないし!結希うざい!」

「あゆの"うざい!"には愛があるねぇ」

「う…うざい…」

更に赤くなる。可愛いなぁ

最近、あゆの扱いが上手くなったなぁと自分でも思う。

「ね、歌詞はついてるの?」

「まだつけてないよ」

「じゃあ、あゆがこれから考えるの?」

「ま、適当にね。歌詞なんてあとから変えられるし」

そこであたしはひらめいた!

「じゃあ、あたしが歌詞作る!」

「バカも休み休み言ってくれる!?あのねぇ、素人にできるもんなら僕はこんなに―――」

後ろから近づいてきた人影に気付いて振り向くと、引きつった笑顔の玲音さんがいた。

「さっきから注意してるんだけど…
 静かにできないなら、図書室の利用禁止!」

と怒られ、図書室からつまみ出されてしまった。






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