Z組です、天才です!

□遊園地と宣言
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―side 叶―

6月に入り、暑さもいよいよ本格的になってきた今日この頃。

俺は先週から計画していたことを今日、実行しようと思っていた。


俺は教室の中をきょろきょろと見回し、あの子を探す。

すると、自分の席について読書をしている姿を見つけた。


俺は少し深く深呼吸をした。

大丈夫だ。絶対成功する。

自信を持っていけ、叶!


「琴乃ちゃん」

「ん?どないしはりました、叶はん」

琴乃ちゃんの前に立ち、笑顔で声をかける。

案の定、予想通りの返事が返ってきた。

「いや、用事ってほどでもないんだけどさ…茶道部って、いつ休みなのかなぁって思ってね?」

「茶道部どすか…?」

琴乃ちゃんの口から部活の話が出てきたから、驚いたかもしれないけど…

琴乃ちゃんは茶道部に入ってるんだ。

ちょっと補足すると、

俺は剣道部。ほかに、周は美術部に、紅羽ちゃんは調理部に入ってる。

「そうどすねぇ…今週と来週はお休みやったと思います」

「そっか、じゃあ、今週の土日はヒマ?」

「予定はないどす」

本当に計画通りの答えが返ってきてくれて、俺としては安心の一言。

「そっかそっか…じゃあさ」

ここで例のものをポケットからさっと出してみせる。

「ねえ、俺と遊園地に行かない?」

…決まった。

これなら琴乃ちゃんの答えは確定のはず…

「わぁ、いいねぇ遊園地!もちろん、俺たちも一緒だよね、かなうん?」

「…は?」

返事をしたのは琴乃ちゃんではなく、琴乃ちゃんの首に後ろから腕を回したグレイだった。

「楽しみだねぇ、ことのん!かなうんが遊園地連れてってくれるんだって!」

満面の笑顔のグレイに、少し殺意が沸いた。

いや、少しどころじゃない。かなり、だ。

「あの、グレイはん、叶はん…」

「うん?なーに、ことのん?」

「どうしたの、琴乃ちゃん」

俺とグレイが琴乃ちゃんを見ると、困ったような顔をしていた。

「あの…えっと…」

恥ずかしそうに、うつむいている。

「グレイ、琴乃ちゃんが恥ずかしがってるのを察してあげたらどうだい?」

きっとグレイが抱きついているからだと思い、それを指摘する。

対するグレイは、ぷくっと頬を膨らませ反抗してくる。

「えー?これくらいアメリカでは普通だよ。
 かなうんはグローバル化が進んでないね」

「おいおい、ここは日本だろ?」

火花が飛びそうなほどにらみ合っている俺たちに挟まれた琴乃ちゃんは、申し訳なさそうに声を上げた。

「あの…遊園地って、なんどすか?」

「「…えっ?」」







「じゃ、じゃあ…修学旅行も行ったこと無いの?」

「はい…お母はんに、遊びに行くくらいなら家で勉強してなさい言われて、小・中と遠足すら行ったことないんどす」

な…

なんて不憫…

「それなら、今回は行かなきゃだよね?遊園地ってすっごく楽しいんだよ?上手く説明できないけど…楽しいんだ!」

笑顔で説明…にもなってない説明をするグレイを見て、琴乃ちゃんは笑顔になる。

「それは楽しそうどすなぁ」

「うん、楽しいよ!だから、みんなで行こう?お金はかなうんが負担してくれるから!」

「ちょっとちょっと?今聞き捨てならないことが聞こえたんだけれども?
 …まあ、俺の家が建設に関わってるから、招待券はいくらでももらえるし…」

ホントは2人で行きたかったけど…

これも、琴乃ちゃんのため。

「今度の土曜日、みんなで行こう!」

「わあ、叶はん、おおきに!」

「よっ、かなうん太っ腹!!」

グレイはちょっと気に食わないけど…

琴乃ちゃんのためならば。






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