Z組です、天才です!

□秘密と後悔
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−side 紅羽−

「かぼちゃと…栗とか。あと、お芋」

放課後の調理室、あたしは紫芋を片手に頭を悩ませていた。


今月の3週目に、ことりさん企画の「秋の味覚週間」が始まる。

秋が旬の食材を使って、1週間限りのメニューを出すのが企画内容。

企画書が見事、文化推進委員会の審査を通ったので、部活が終わったあとにメニューを考えている。

「スイートポテト…は、もうあるし…」

あたしは側にあった椅子に腰かけて、手の中で栗を転がした。

「…ことりさん、初めて任せてくれた…」




『くーちゃん!企画通ったよ!』

審査に通った日、ことりさんは私に1番に教えてくれた。

最近呼ぶようになったあだ名であたしを呼び、

満面の笑顔で書類を見せてくれた。

『わ…やりましたね!』

『うん!それでね…』

相変わらずにこにこと微笑みながら、ことりさんはあたしに言った。

『メニューの半分、考えてみない?』




思い出して、思わず顔がにやけた。

ことりさんは、本当にいい先輩だと思う。

アイディアも技術も、ことりさんには到底及ばない。

でもそこに傲らず、その上あたしにまで教えてくれる。

そして誰より、毎日を全力で生きていて、普通の日々に感謝をして生きている。

「…頑張ろ」

ことりさんの期待を裏切ったりはしない。

そう思って調理台へ向かった。




そのとき、調理室の外から何人かの男子の声が聞こえてきた。




「あれ、調理部ってまだやってんの」

「いや、今日は終わったっぽいけど」

「ふーん。あ、Z組の藤って調理部だよな。あれ何、化粧してんの」

「だっけな」

「あれ、女子から反感すごいみたいだよな。似合ってないくせにーって」

「んー…まあ、本人がいいならいんじゃないの」








さっきの男子の声が、頭の中で反芻される。

他のクラスの女子から反感を買っているのは知っていた。

ただでさえ待遇のいいクラス。

結希だって琴乃だって、少なくとも何かは言われている。

だから、傷ついたりしない。

しない、はずなのに

「っ…!」

まな板に涙が染みた。


「だって…このメイクは…!」






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