Z組です、天才です!

□犬と日曜日
3ページ/3ページ

「結局、どこもダメだったね」

最後まで貰い手が見つからず、あたし達は最初に居た場所に戻ってきていた。

「仕方ないだろう。明日、学校が終わってからまた貰い手を探しに行けばいい」

あたしを慰めるように、周はつぶやいた。

あたしは申し訳ない気持ちで子犬をダンボールに入れた。




「あれ、何で紅羽と周がいんの?」

聞きなれた声に、あたしと周が慌てて振り返ると、そこには…

「「歩!?」」

「はいはい、歩だけど?ていうか、そこ退いてくれない?僕はこいつに用事があるんだ」

そう言って子犬に近づいてくる歩の手には、子犬用ドッグフードとミルク。

それをダンボールのそばに置くと、歩は見たことも無い笑顔で子犬を撫でる。

「昨日こいつ見つけたんだけど、忙しくてさぁ…
 ホント、犬って可愛いよ」

歩からは、普段は言いそうにない言葉が放たれる。

「え、ちょっと…歩って動物…」

「好きだけど?」

あたしはうなだれた。

そ、そんなことなら初めから歩の家からあたってけば良かった…

「ねえ、紅羽。こいつちょっと抱いてて」

「わっ」

突然歩に子犬を手渡され、困惑するあたしをよそにポケットからライトを出す歩。

「よーしよし、いい子だね」

子犬の頭を撫でながら、子犬の目に光を当てる。

すると子犬は、まぶしそうに目を細める。

「よし、じゃあ…周、ちょっとそこで手、叩いて」

「あ、ああ…」

今度は周に手を叩かせた。

子犬は音の鳴るほうへ首を傾ける。

歩は満足そうに笑うと、また子犬の頭を撫でた。

「うん、視覚、聴覚共に異常なし。さっき見たところ怪我も無かったし…賢そうだ。
 こいつ、僕が貰ってくよ。いいよね?」

あたしたちは呆気にとられてしまう。

…が、あたしはすぐに正気を取り戻し、

「あんたは獣医か!」

と突っ込む。

「まぁ、ちょっとかじった程度だけど。
 とりあえず、こいつ貰ってくから。周、そこの荷物持ってきて」

「…やれやれ、結局私も行くんだな」

周は一瞬困ったような顔をしたけど、歩の頼みを聞いて、ちゃんと荷物を持ってた。

歩はさっさとあたしから子犬を取り返すと、1人で行ってしまった。

後を付いていこうとする周の背中に、あたしは言った。

「周、今日はありがとう!結構楽しかったよ!」

そう言うと、周は振り向いて



あたしに向かって、初めての笑顔をくれた。












今、夕焼けですごく良かった。

男子にあんなに優しく笑ってもらったの、初めてで…

きっと、この夕焼け空くらいに顔が真っ赤だから。












前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ