Z組です、天才です!

□真貴と兄妹
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それからすぐに、紗貴の葬儀が行われた。

親しいわけではないクラスの人たちも、全員が参列した。

僕は、紗貴の亡骸をみることが出来ずに、ロビーでぼうっと天井を眺めていた。

今、紗貴の姿を見れば、僕はきっと泣いてしまう。

紗貴は僕が悲しむことを望んでいないから…。

「真貴…」

「お前、この世の終わり見たいな顔してる」

この日は、歩と叶が紗貴にお別れを言いに来てくれた。

叶は紗貴を実の妹のように可愛がってくれたし、

歩は入院中の紗貴にピアノの弾き方を教えてくれた。

僕は2人に向けて、笑顔を作った。

だけど、それが痛々しかったらしく、更に悲しそうな顔をさせてしまった。

2人は僕を挟むように座り、同じタイミングで僕の頭をポンと叩いた。

「言っとくけど、僕たちは親戚とかの前に友達なんだからね」

「お互いに強がりは無し、だから」

2人の優しさに、涙が出そうになるのを必死でこらえた。





と、そのとき

「まさかあんなことになるとはなー」

「俺だってここまで予想してやったわけじゃねーし!」

振り向くと、紗貴と同じクラスだった男子生徒2人。

「勉強してないくせに、俺らより成績いいしよ。それに、障害持ちとかお荷物だっていうの自覚してねーし。
 それを分からせるために閉じ込めたのに、まさか死ぬとは思わねーじゃん?」

話を聞く限り、2人のうちの片方は紗貴を閉じ込めたらしい。

「何あいつら…感じ悪いんだけど。僕らが居るの気付いてないの?」

歩が怪訝そうに眉をひそめた。

そんな僕らに気付かず、その男子生徒は半分笑いながら続けた。

「ブラコンだし、金持ちだからっていい気になってさぁ!
 マジでいい気味だっつの!」

「あいつら…!!」

叶が立ち上がりそうになったのを、僕が止めた。




反省の色も見せず、人の死を…僕の大事な妹の死をいい気味だと言って笑うそいつを見て、僕が我慢できるはずが無かった。

「ちょっと、まずいって!!」

「大丈夫だって!誰も聞いてねーよ」

僕は悪びれる様子も無いそいつの前に立ちはだかった。

僕よりも少し背の高いそいつは、相変わらず笑うのを止めない。

「お、おい…」

「何だよ…さ、佐倉野先輩…」

そいつは僕の顔を見ると、怯えたような顔になる。



「僕の妹の死が、そんなに面白いですか?妹が…紗貴がどんな思いで死んでいったのか分かりますか!?

 お前が――お前が紗貴を!!!」

気付けば、僕はそいつを殴っていた。

倒れたそいつの上にまたがり、何度も殴って、叶と歩に止められた。

「真貴、落ち着いて!!」

「気持ちは分かるけど、ここで騒ぎを大きくしちゃダメだ!」

きっと、叶と歩もこいつを憎んだはず。

それでも手を出さなかったのは、僕と紗貴のため。


僕はぼろぼろと泣きながら、何度も叫んだ。




「紗貴を返せ!!僕の妹を返せ!!!」







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