Z組です、天才です!

□真貴と兄妹
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昔のことを思い出しては、零れそうになる涙を、空を見上げてこらえた。

だけど、溜められる涙の量にも限界があって、止まらずあふれていく。

人の命と、よく似てる。

僕が…紗貴の零れた分の命をすくって、また戻してあげたいと思っても、それが出来る人はいないから。

僕が出来るのは、ただ紗貴を思って涙することだけ。

「真貴さん…」

そばにいた瑞樹君は、僕を静かに見守ってくれていた。

「紗貴…僕が、守ってあげられていたら…」

もっと一緒に居たかった。

僕が支えてあげたかった。





「真貴は綺麗な泣き方するよね」

静かに目を開け振り向くと、歩と叶の姿。

「歩…叶…」

歩はいつもの不機嫌そうな顔ではなく、僕のことをしっかりと見据えていた。

「まず、真貴に謝る。真貴が飛び出してった後、説明するために紗貴のこと話した。多分真貴は、言って欲しくなかったと思うから、ごめん」

こんなにすんなりと、歩の口から謝罪の言葉が出るのは珍しかった。

「それから、僕から言いたいこと、ある」

歩はずかずかと僕に歩み寄り、僕の腕をぐっと引っ張った。

すると、大して大きくも無い僕の体は、歩の影に隠された。

「そうやっていつも綺麗な泣き方してさ、かっこつけてるから紗貴のこと断ち切れないんだよ。
 …今は僕が隠してやるから、思いっきり泣けばいいじゃん」

ぶっきらぼうに言い放つ歩の顔は、言葉とは裏腹にとても優しかった。



…紗貴、ごめん。

今日は…今日だけはかっこ悪いお兄ちゃんにならせてください。

「っく…うっ、あ…」

うつむいた瞬間、僕の涙が地面をぬらした。

「ひっ…く、っ…さ…き…」

泣いていると、僕の頭に温かい何かが降ってきた。

歩越しには、鼻をすする音が聞こえる。

歩も叶も、紗貴を思い出して悲しんでくれているのが分かる。

大切な友人の優しさに触れて、僕の涙は益々零れる。

「もっと…一緒に、いた…かったぁ…」

ずっとずっと、僕は泣き続けた。











「真貴、泣きすぎ。目真っ赤だし」

「それを言うなら歩もだろう?鼻真っ赤にして」

「叶だって人のこと言えませんよ」

あのあと、結局3人で夕方まで泣き明かしてしまった。

でも…僕は2人のおかげで、もう紗貴を思い出して辛い思いをせずに済みそうだ。

僕は静かに目を閉じた。

いつもは、紗貴の命が絶え行く姿しか浮かんでこなかった。

でも、今は違う。

車椅子に乗った紗貴が、笑顔で僕へ向かってくる。

『お兄ちゃん、大好き!』

そう言って僕に抱きついて来るんだ。






素直で可愛い妹。

不器用だけど、僕を包み込んでくれる歩。

何も言わずにそばに居てくれる叶。

それと…きっと、不安になっている結希様たちをなだめてくれている周。





こんな素敵な人たちに囲まれ、生まれてきた僕は世界一の幸せものだと言っても過言じゃないと思う。









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