Z組です、天才です!

□遊園地と宣言
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―side 琴乃―

「わぁ…これが、『遊園地』なんやね!面白そうなものがいっぱいどす!」

自分でも、目が輝いているのが分かった。

はじめてみる遊園地は、とても魅力的。

大きな円の形の「観覧車」や、

すごく早いスピードで走っていく「ジェットコースター」。

中から悲鳴の聞こえてくる「お化け屋敷」。

全部全部、乗ってみたい!!

「遊園地来たの、久しぶりー!!」

「あたしも久々」

両隣を見れば、うちを挟むようにして立つ結希はんと紅羽はん。

二人の顔も、すごくワクワクした表情になっている。

「へぇ、結構充実した設備だ。最初はジェットコースターだよね」

「あ、じゃあ僕はパスで」

「何を言っている、真貴。遊園地はすべてに乗ってなんぼのものだぞ?」

後ろを見れば、男の子たちも期待に胸を膨らませているように見える。

遊園地は男の子も一緒に楽しめるんやね。

「さて、中に入ろうか!今日は貸切だよ!」

叶はんが笑顔で言った。

ここは、叶はんのお家が建設を担当した遊園地やから、オープン前日の今日、遊ばせてもらえることになった。

叶はんに感謝感謝、やね。

「ことのん、まずは一緒にジェットコースター乗ろっか!」

突然ぴょこんと現れたグレイはんが、うちの手を掴み走っていく。

「あ、僕も乗る!」

「私も行こう」

「あたしもー!!」

便乗して、歩はん、周はん、結希はんも付いてきた。

「俺も行くけど、2人はどうする?」

叶はんは、真貴君と紅羽はんに声をかけていた。

「あたしは…ムリね。真貴、一緒に待たない?」

「嬉しいお誘いですね。…待ちます」

うーん、真貴君と紅羽はんは乗らへんのどすか…

そないに怖いんどすか?ジェットコースター。









「ジェットコースター、楽しいなぁ!次はどれに乗ります?」

乗ってみたジェットコースターは、すごく面白かった。

高い景色がすごく綺麗だったし、落ちる瞬間のあの、ふわっとする感じが癖になる。

これが遊園地!

みんながワクワクする気持ちも分かる気がする。

「じゃあ、次はコーヒーカップだ!行くぞことのん!!」

「コーヒーカップ…あの、くるくる回るやつやね!」

結希はんに連れられて、今度はコーヒーカップへ。

「これはどういう乗り物どすか?」

「これはねぇ、ここのハンドルを回すと、このカップが回るんだよ!」

言われたとおりまわしてみると、本当に回った。

「わぁ!回る回る!楽しいなぁ!」

「ここここ、ことのん!あんまりまわしすぎると具合悪くなっちゃうよー!?」

必死に止めようとする結希はんをよそに、うちはカップを回し続けた。


その後も、色々な乗り物に乗ってたくさん遊んだ。

様々な種類のあるジェットコースターにもたくさん乗って…

みんなは顔を青くしていた。

…?うちは大丈夫やのに、みんなはダメやの?






―side グレイ―

「ひぃー…ちょっと休憩」

ことのんに付き合ってジェットコースターに乗りまくったら、ちょっと具合が…

遊園地来るの初めてだって言ってたよね?

よね!?

なのに、何でこんなに絶叫系に強いんだか…

俺は近くにあったベンチに、どかっと腰掛けた。

すると、そばから誰かの手が伸びてきて、ジュースをくれた。

かなうんだ。

「お疲れ。同情のジュースだけど、飲むかい?」

「同情でもなんでも、貰う」

俺はそのジュースを受け取って、一気に飲み干した。

「そんなに具合悪くなるまで付き合うことないんじゃない?」

「んー…そこまでしても付き合いたかったんだ。ことのんの笑ってる顔、見たかったから」

ジェットコースターを降りた後の、活き活きとした顔。

『次はあれがいい!グレイはん、いきまひょ?』

そう言って笑う、ふわふわの笑顔。

可愛いんだもん。付き合いたくもなる。


って、んん??

俺、何でかなうんにこんなこと話してるんだ?

そうだよ、かなうんはライバルじゃないか!!

あ、そう思うとなんか、ライバル意識わいてきた。

「ね、かなうん。俺ね、この前ことのんに告白したよ」

笑顔でそう言ったら、目を丸くして驚いてた。

「絶対にことのんの中で1番になって、ことのんを守るんだって言ったら、顔赤くされちゃった」

あのときの顔、すごく可愛かった。

もう1回みたいなぁ。

「…それ、返事どうなったの?」

「俺が返事させなかった。きっと今はまだ、決められないだろうから」

「ふうん…」

複雑そうな顔をするかなうん。

ちょっとだけ優越感を覚えた。

「それ、何で俺に言ったの?」

「だってかなうん、ことのんのこと気になってるじゃん。だから、ライバル宣言!!」

俺は、口角を上げてにっと笑って見せた。

「かなうんがどう思うかは知ったこっちゃ無いけど、俺は負けないから!」

返事は返ってこなかった。

それでいいんだ、別に。

だってかなうんもきっと、自分の気持ちに気付いてないから。

だからそんなに困惑した顔してるんでしょ?

だったら俺が1歩リードだよね?

あとから自覚したって、遅いんだ!

「じゃあ、俺はことのんのとこに行くから!」

それだけ言い残して、俺はことのんの姿を探し始めた。

すると、売店で紅羽とマキティとアイスを買っていた。

「あ、みんなアイス買ってるの?俺も買うー!」

いつもの調子で、その輪の中に入っていく。



"自分のペースで"だなんて、してられない。

自分のペースよりちょっと早めで、ね!





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