Z組です、天才です!

□北十字星
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「グレイはん、今日は撮影やたんどすか?」

「そうなんだよねー。4時間目までには間に合う予定だったんだけど、間に合わなかったぁ」

「ふふっ…間に合わせなかったんとちゃいますか?」

「うっ…そ、それは…」

ことのんとのおしゃべりは楽しくて、あっという間に寮についてしまった。

「つき合わせちゃってごめんね?」

「何言うてはりますの。うちが誘ったんやないどすか」

嫌味の無い笑顔でにっこりと笑うことのん。

「じゃあ、誘ってくれたお礼に、ことのんの聞きたいこと何でも答えてあげるよ!」

今の俺に出来る精一杯のお礼って、これくらいしかないから。

俺が言うと、ことのんは少し考える仕草をして、ぱっと顔を上げた。




「グレイはんのフルネームが知りたい」





「ただいまー」

「お帰り。遅かったね」

家に帰ると、あゆが出迎えてくれる。

実際、この家は俺の家じゃなくて、あゆの家。

色々と理由があって、俺はあゆの家に居候してる。


あの後…

『名前…どうして?』

『だって、グレイはテストにも持ち物にも、英語で"gray"てしか書いてへんやろ?
 いっつも不思議なんよ。どうしてフルネームで書かへんのやろって。
 …もしかして、聞いたらあかんことやった?』

『あ…別に大丈夫、だけど…
 …ごめん、やっぱ言えない。ホントごめん』


それだけ言い残して、俺は帰ってきてしまった。

「グレイ、早く夕飯食べちゃってよ」

「あ、うん!」

あゆの声にはっとして、俺は慌てて荷物を部屋に置きに走った。







その夜、すごく懐かしい夢をみた。


『母さん、白鳥座ってどれー?』

『おいおい、そこは父さんに聞くべきだろ?』

背の高い父さんに肩車された俺は、冬の夜空を見上げていた。

『お父さんが拗ねてどうするの、もう…。ほら、わかる?あそこのね、十字にクロスしてる星座があるでしょ?』

母さんはひときわ輝く星の周りに、指で円を描いていた。

『あ、あったー!父さん、ほらあそこだよ!』

興奮した俺は、父さんの銀色に輝く髪を引っ張っていた。

『いたた、こらこら、引っ張るんじゃないって。見えてるよ、ちゃんと』

ははは、と父さんは豪快に笑った。

俺と母さんもつられて笑う。

『あれが、俺たち家族の象徴なんだぞ』

突然、父さんがしんみりとした声で言った。

『え、何で?』

『白鳥座は、北十字星とも言うんだ。英語で言うと、"Northern Cross"だ』

『ノーザンクロス!?』

俺はその言葉に目を輝かせた。

『すごい、すごいよ!父さん、母さん、俺たちの星だよ!俺たちの白鳥座だよ!!』

そう言うと、母さんも微笑んだ。

『そうね、あの子も私たちの家族よね。私たちノーザンクロスの…』










目が覚めたとき、俺の頬に涙が伝っていた






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