Z組です、天才です!

□北十字星
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「グレイはん!」

会場を出た俺はふらふらとその辺を歩いていた。

すると、もう下校時刻になったのか、琴乃ちゃんが俺を見つけてくれた。

「体調悪いんやろ?外出て大丈夫なん?」

彼女の訛りも、初対面のときに比べたらとても砕けたなと感じる。

「大丈夫だよ。仕事と学校との行き来で疲れただけだからね」

俺は笑う。

だけど、ことのんは心配そうに顔を歪めるばかりだ。

「うちで力になれることがあったら言うてな。グレイはん、自分の中で溜め込みすぎやさかい、もう少し周り頼ってもいいんどすえ」







『過去の自分に捕らわれそうになったら、そのときは周りを頼りなさい。自分だけでどうにもならないことを、自分で解決はできないんだからね。バカなことをして他の人を心配させるよりも、いっそ頼ってもらった方が、相手は安心するんだから』







「…思い出した」

「え?」

あの時、進さんはもっと頼りなさいって言ったんだ。

俺もあゆも、不安や辛さを自分の中に溜め込んでどうしようもないことを進さんはわかってて、

だから言ってくれたんだ。

「ことのんはすごいね。いつも俺を助けてくれる」

俺はことのんの頭を撫でた。

分からないといった顔をすることのんの耳元に顔を近づけた。



「霧斗・グレイ・ノーザンクロス」



昔捨てたはずの名前を、その耳に呟いた。

「俺の名前、霧斗」

微笑んで見せた。

「霧斗…はん…」

たどたどしく俺の名前を呟くことのん。

久しぶりにフルネームを名乗ったものだ。

自分でさえ懐かしく感じてしまう。

「そうだよ。普段使ってるグレイは、ミドルネームなんだ。霧斗・ノーザンクロスだよ。ノーザンクロス。北十字」

「なんや…かっこええ名前やね」

にっこりと微笑むことのん。

その笑顔に、さっきまで頭の中でもやもやと漂っていた煙が晴れた気分になる。

ことのんなんだ。

今の俺を支えてくれるのは、ことのんだけなんだ。




「他の人に教えちゃダメだよ。二人だけの秘密だからね」




俺の心を支えてくれるのも、開いてくれるのも、彼女だけだから。


だから


彼女を導く白鳥座になりたいんだ。



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