Z組です、天才です!

□元カノとフランス語
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−side グレイ−

「二人で話すの久しぶりだね!どこ行きたい?」

聖の前を歩く俺は、笑顔で振り返った。

最近、お互いの仕事が立て込みすぎて、顔を合わせる機会が減っていた。

だから、久しぶりに一緒にいられることが、楽しくて仕方がない。

「んー…お腹、減った」

恥ずかしそうにお腹をさする聖。

「じゃあ、学食行こう!」

俺が聖の手をとると、恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑った。

「Merci 霧斗」





「ことりサン、今日はフレンチやってる?」

「あ、グレイくんお疲れー。フレンチやってるよー!」

「だって!よかったね!」

振り返って、聖に微笑む。

「オープンスクールに参加してる子?お名前は?」

カウンターから身を乗り出して訊ねることりサンに、聖は答える。

「マリア・パピヨンです。えっと、コトリさんは調理部か何かですか?」

「ううん、私は食育委員会なの。今日はね、中学生は半額なんだよ!そこの券売機で食券を買ってね!」

「Merci !」

そうして、券売機へ向かう聖。

「あの子、フランスのハーフで俺の仕事の同期なんだ!」

「へえ、可愛い子だね!グレイくんの彼女?」

「…ううん、違うよ」

核心を突くような質問に、声のトーンが落ちてしまう。

悟られないうちに、去ってしまうのがいい。

「じゃあ、俺も行くね!ばいばい、ことりサン!」







「んー!Delicieux!(おいしい!)」

頬を押さえて、おいしいおいしいと言いながら食べる聖。

「これね、ことりサンがメニューを全部作ったんだよ。すごいよね」

俺もハンバーガーを食べながら話す。

「コトリさんすごい…。これなら私でも全部食べられる」

そういえば聖、少し痩せた気がする。

「最近、ちゃんと食べてる?」

すると、ばつが悪そうに

「忙しいと、食べるの忘れる」

そう言って俯いた。

「ちゃんと食べないと、また大変だよ」

「うん…ごめん…」

どんどん落ち込んでいく聖。

俺は思わず笑ってしまった。

「その分、今日いっぱい食べたらいいよ。…ほら、ほっぺについてる」

俺は頬に触れて、付いているパンをとった。

そんな俺を、顔を赤らめて見上げる。

…自責の念、て、こういうことをいうのかな。

この表情を見る度、申し訳なくなる。

ごめん、聖。ごめん。



「そんな顔しないで」


聖の手が、俺の頬に触れた。

困ったように笑う聖は、いつも泣いているように見える。

「私は、霧斗の意思を尊重したい」

何だか、俺の方が泣きそうだ。

「でも、上手くいかない…」

頬に触れているその手を握った。

「間違ってたのかな…」

その言葉に、聖は手を握り返してくれた。

「あなたが幸せになれると思ってした行動なら、間違いじゃないよ。ちょっと寄り道してるだけ」



何でこんなに優しいんだろう。

聖も、ことのんも…




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